平成27年度に行ったGd-EOB-DTPA造影剤を含有させて濃度を調整した水溶液の実験用ファントムの撮像で得られた結果を基にして,R2*値およびR1値を測定するためにMRシーケンスプロトコールを作成して引き続き臨床症例の撮像を行った. 研究実施計画では,NASH患者における造影剤取り込みを定量する予定であったが,想像以上にNASH患者数が少なく(合計8名),NASH患者を含めた慢性肝障害患者および非慢性肝障害患者のMRI撮像を行った. 平成30年度では合計14名の患者にMRI撮像を実施し,平成29年度までにMRI撮像を行った77名と併せて全体で91名の患者に対して目的のMRI撮像を実施することができた。このうち全症例においてDIXON quantより得られるR2* mapおよびR1 mapを撮像することが可能であった. DIXON quant法で撮像されたMRI画像から得られた計測値から算出した造影前後でのR2*値の変化率(ΔR2*値)および造影前後でのR1値の変化率(ΔR1値)と肝機能の指標であるMELD scoreおよびICG 15分停滞率との相関を調べたところ,ともに強い負の相関(Spearman's rho=0.523-0.639)が見られた.一方で、R2* mapにおいてはSusceptibility effectによる画質低下が見られ、特に肝左葉では肝右葉と比較して数値計測に信頼性が乏しいことが分かった。また、背景肝実質への過剰な鉄沈着をきたしている患者においては造影剤投与前よりも造影剤投与後で数値の低下が見られ、造影剤取り込みの定量についての信頼性が著しく低下する症例が確認された(計3例)。これらはR2* mapに特有の事象と考えられ、R2*値を肝機能定量に利用する上での限界と考えられた。
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