子宮頸がん治療における腔内照射は、初発時・再発時を問わず、病変が限局している場合には根治に至らせることが出来る非常に有効な治療方法である。しかし現在市販されているアプリケーターは欧米人向けに開発されたものであり、比較的体格の小さな日本人・アジア人に適用するのは困難な場合が多く、日本人の体格に合わせたMRI対応アプリケーターの開発に着手した。 平成28年度は、前年度に3Dプリンターを用いて作製した試作品を元にアプリケーターを作製し、またその安全性に関する検証を行った。当初の計画通りに、膣円蓋部で固定するオボイド部分は25x25x20(縦x横x奥行)mmと、現在使用しているものよりも小さく、高齢者の狭膣でも適用出来るように作製した。オボイドの中心には、子宮腔内に挿入するタンデムが固定出来るように4mm径の通路を確保した。しかし、この間の臨床経験から、研究計画のままのサイズでは線源間の距離が短すぎ、特に組織内照射を併用した場合に200%以上の高線量域の発生が必発であることが明らかになり、これに関する改善の必要性が明らかにされた。 本アプリケーターを実際の治療に用いる際には、治療チューブを介して遠隔操作が可能な治療装置(microselectron HDR)と接続して照射を行うことになる。線源は確実かつ安全にこのユニット内(治療装置・チューブ・アプリケーター)を移動する必要性がある。これに関して実験を繰り返したところ、接続は概ね安定した。しかし、接続部分に関しては治療装置の製造・販売を行っている企業との協力体制が必須であるがこちらに関しては現段階ではうまくいっていない。今後も同社との連携について働きかけてゆく必要がある。 本研究におけるアプリケーターを臨床に応用するにはこれまで述べてきた問題点を解決することが必須である。研究期間中に完成には至らなかったが今後も研究を継続してゆく。
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