研究課題/領域番号 |
15K19795
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
篠原 祐樹 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (60462470)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 急性期脳梗塞 / 脳血管障害 / MRI / R2*マップ / T2*強調像 |
研究実績の概要 |
R2*マップとは、脂肪抑制法の一つであるDixon法を応用した、マルチエコー収集によるコントラスト画像撮像法である。本検討の目的は、急性期脳梗塞におけるR2*マップの血管内塞栓子の診断能を調べることである。最初に基礎実験として、当院放射線技師の協力の下にMRI模擬ファントムを作成し、R2*マップの磁化率アーチファクトに関する検討を行った。当院の倫理審査委員会の承認を得て脳血管障害患者に対するR2*マップ撮像も開始し、得られた画像について2名の神経放射線科医による視覚的評価を行った。主幹脳動脈閉塞患者において塞栓子と考える所見を認めた場合は、R2*マップとコンベンショナルなT2*強調像との比較、ならびに関心領域解析による塞栓子のR2*値の定量評価も行った。急性期脳塞栓症患者26名が対象となり、9名ではR2*マップ・T2*強調像ともに閉塞部位に一致した塞栓子と考える信号変化を認めた。7名ではR2*マップの方がT2*強調像よりもより明瞭に塞栓子を反映した信号変化を示しており、残る10名はR2*マップ・T2*強調像ともに閉塞部位に一致した塞栓子と思われる信号変化は特定できなかった。以上より、R2*マップにおける塞栓子の検出能は高く、特に内頸動脈や椎骨脳底動脈といった空気や骨からの磁化率アーチファクトの影響を受けやすい頭蓋底に近い血管で優れていた。一方定量評価では、心原性塞栓症の栓子のR2*値(136.6 /msec)と動脈原栓塞栓症のR2*値(189.9 /msec)との間には有意差を認めなかった(p = 0.332)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのR2*マップを用いた我々の基礎実験ならびに臨床研究において、視覚評価による定性解析に関しては、R2*マップの脳血管障害における有用性が示唆される結果となっている。一方、塞栓子のR2*値を計測した所、脳梗塞の臨床病型、特に心原性脳塞栓症の栓子と動脈原性塞栓症のそれとの関連性は低い結果となった。これらの研究成果については、海外雑誌へ原著論文を現在投稿中である。また臨床研究の中で、急性期脳塞栓症に加えて急性期脳動脈解離の偽腔内血栓の早期検出にもR2*マップが有用であることを確認できた。その検討結果は第10回アジア・オセアニア神経放射線学会(2015年11月)で演題発表を行い、原著論文として英文雑誌(Neuroradiology 2015;57:909-915)に受理・掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
塞栓子のR2*値が臨床病型による違いと関連性の見られなかった要因としては、現時点での検討症例数がまだ少ないこと、R2*マップの至適撮像条件に改善の余地のあることが可能性として考えられる。MRI模擬ファントムを用いた基礎実験や、R2*マップの関心領域解析の精度などを再検討し、今後も症例を積み重ね、研究を継続していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にはR2*マップの基礎的検討および脳血管障害における臨床的検討を行い、その結果を基に国内学会、国際学会それぞれ1回ずつ発表を行う予定であった。初年度ということで、MRI模擬ファントムの精度や症例数などの面で国際学会発表の水準にまでは達しなかった部分があり、物品購入費や旅費に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記未使用額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、MRI模擬ファントム改善のための物品購入費として使用すること、国際学会発表と論文作成のための費用として用いること、などを計画している。
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