心筋梗塞と診断され、高速エネルギースイッチング法を用いた遅延造影CTと遅延造影MRIが撮像された17症例を研究の対象とした。遅延造影CTでは各症例毎に、40keVから140keVまでの10keV毎の仮想単色X線画像とヨード密度画像(それぞれ左室短軸像)を作成した。計12種類のCT画像による梗塞心筋の診断能(16セグメントモデル、5ポイントスケール、項目:感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率・正確度・ROC下曲線下面積)、壁深達度(5ポイントスケール)、画質(Contrast-to-noise ratio(CNR)と%signal increase(%SI))、梗塞体積につき評価した。12種類の遅延造影CT画像の中のうち、ヨード密度画像のCNRと%signal increaseが有意に高く、ヨード密度画像は他評価項目においても最も実用的で有用な画像であった。特に梗塞心筋体積の定量解析においては、遅延造影MRIによる計測と同等の数値を示した。高速エネルギースイッチング法を用いた遅延造影CTにより生成されるヨード密度画像は、ヨード密度を強調する特殊な画像特性によって高いヨードコントラストを実現することができ、梗塞心筋診断における定性評価・定量評価において大変有用であり、MRIと同じように診断に有用な情報を提供することが可能であった。高速エネルギースイッチング法を用いた遅延造影CTは、MRIが禁忌な症例において代替的に梗塞心筋の評価が可能であることが示唆された。研究内容は、第102回北米放射線学会 (Radiological Society of North America(RSNA)2016)にて発表し、新たな知見をもとに論文を作成し、海外の英文雑誌に投稿した。
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