研究課題
本研究は,二動原体染色体(Dic)や転座などの染色体異常を指標とした低線量被ばく用検量線の作成と交絡因子の探索,および染色体異常の経年的変化の解明を目標としたものである。低線量被ばく用の検量線は健常者5名分の末梢血にγ線を8線量(0-1,000mGy)照射した検量線を作成した。低線量被ばくの評価には,解析細胞数を増やすことで100mGy未満の線量についても評価可能であることを見出した。一方で,転座は照射以前の蓄積による個人差が大きく,正確な評価には年齢補正が必要であること,大多数の健常者サンプルから自然発生における染色体異常頻度データの収集が必要であることが明らかとなった。染色体異常の経年的変化の解析では,年1回CT検査を行う8名を3~4年に亘て,3回分のCT検査前後の末梢血リンパ球のDicおよび転座頻度の変化について解析した。Dic,転座ともに継続的なCT検査による被ばくでは,染色体異常の頻度の蓄積(増加)傾向は認められなかった。また,喫煙群と非喫煙群による解析も行ったが,有意差は認められなかった。これまでの結果から,CT検査による被ばく(数m-数十mGy)では,確かにDNA損傷は認められるものの,年1回の検査被ばくでは蓄積性の変化は認められず,CT検査後1ヶ月以内に認められたDicの増加もCT検査前の数値と同等の値まで減少していた。転座に関しては,CT検査の被ばく量では,受診者のこれまでの自然発生による染色体異常の蓄積に隠れてしまい,被ばくの影響は検出できなかった。低線量被ばくの影響解析および染色体異常形成における交絡因子の探索には,自然発生頻度による染色体異常頻度の年齢別データの収集が必要である。
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