研究課題
ラジオアイソトープ(RI)標識ペプチドを用いる「がんのアイソトープ治療」では、投与したRI標識ペプチドが早期から腎臓に高濃度で集積する。そのため、腎被曝により発症する腎障害の解消が臨床において重要な課題となっている。これまでに申請者は、本邦でも臨床使用されている111In-DTPA-octreotideをモデル化合物とし、母体ペプチド鎖の化学修飾により体内動態を改善できる可能性を報告してきた。本研究ではこれまでの知見に基づき、優れた体内動態を示す治療用放射性octreotide誘導体の開発を目的とした。平成29年度は、前年度までに達成出来なかった90Yと安定な錯体を形成する標識前駆体ペプチドの合成を再検討した。前年度までに見出した「腫瘍集積を大幅に増大する新たなペプチド配列」と、90Yと安定な錯体を形成する「チウキセタン骨格」をつなぐリンカーの種類を検討した。しかし、どのリンカーを用いても目的ペプチドを高純度で得ることは出来なかった。リンカー長の増大により、分子全体の疎水性が増加するためか、不溶性の凝集体が得られ目的化合物の単離、精製は困難であった。また、リンカーによっては化合物の分解が認められ、目的化合物の単離が不可能であった。本年度に得られた知見は、新たな放射性octreotide誘導体の開発にあたり、化合物の設計および合成計画にいくつかの道筋を与えると考えられ、非常に有用であった。また、今後はチウキセタン骨格だけでなく、様々な放射性金属核種の標識に用いられているDOTAやその誘導体を錯体形成部位として有する化合物の開発も検討している。今年度までに得られた様々な知見を応用することで、今後「アイソトープ内用療法に適した放射性octreotide誘導体の開発」が可能であると考える。
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Nuclear Medicine and Biology
巻: 54 ページ: 18-26
https://doi.org/10.1016/j.nucmedbio.2017.07.002
http://www3.hoku-iryo-u.ac.jp/courses/1/008/index.html
https://researchmap.jp/31415926/