放射線併用治療の適応拡大を目的とし、Transglutaminase 2(TG2)を標的とした放射線増感剤の開発を目指し研究を行なった。本年度は、前年度に作成したTG2変異体発現HepG2細胞を用いて解析を行った。TG2のTGase活性欠損またはGTPase活性欠損変異体発現細胞を用いて放射線感受性を調べたところ、すべての変異体発現細胞において放射線抵抗性を示し放射線照射後でも高い細胞生存率を示した。しかしながら、TG2-C277S発現細胞では放射線照射後の24時間後のアポトーシスの増加も認められた。また、TG2発現細胞では、放射線照射後のDNA障害の指標のγH2AXの発現の上昇が抑制されたが、TG2によるこの放射線抵抗性にこれらの活性は直接的に寄与しないことが示唆された。また、TG2発現細胞はDoxorubicinには耐性を示したが、Cisplatinに対する感受性は増大した。前年度作成した血清飢餓に耐性を示し、放射線照射には耐性を示さない細胞膜結合型TG2発現細胞用いた解析では、このTG2は細胞膜に局在し核に存在せず、放射線照射による細胞死抑制には、TG2の核局在が必要なことが推察された。抗がん剤耐性試験において、細胞膜結合型TG2発現細胞は、感受性に変化は現れなかった。また、放射線耐性細胞にTG2を過剰発現させても、それ以上の放射線抵抗性は得られなかったが、TG2-C277S発現放射線耐性細胞では、放射線照射後の細胞生存率が著しく低下した。さらに放射線耐性細胞に細胞膜結合型TG2を過剰発現させた細胞や神経細胞におけるTG2過剰発現細胞の作成し解析なども行った。本研究において、TG2による放射線耐性の作用機序の一部が明らかになったが、詳細は不明のままであるため今後も解析を続けていく必要がある。
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