研究実績の概要 |
腎腫瘤の充実性や嚢胞性の鑑別あるいは良悪性の鑑別には、造影CTや造影MRIが推奨されている。しかし気管支喘息や腎機能障害、造影剤アレルギー歴などの要因により、CTやMRIで造影剤が使用できない患者に対しては、現在の画像診断学では腎腫瘤の質的診断が困難になるという問題がある。さらに小さな腎腫瘤(小径腎腫瘤)の質的診断や透析患者における腎腫瘤の造影効果の判定、あるいは嚢胞性腎腫瘤の嚢胞壁や隔壁の評価に対して、従来の造影CTや造影MRIを使った診断では評価困難な場合がある。本研究では、腎腫瘤の質的診断に対する造影超音波検査の有用性を評価し、従来の画像診断方法に対する付加価値を検討する。 主な検査対象は、腎腫瘤が疑われているが種々の要因により造影CTや造影MRIでの精査ができない患者、良悪性の鑑別が困難な小径腎腫瘤を有する患者、腎腫瘤が疑われている透析患者、嚢胞性腎腫瘤を有する患者である。本邦では、腎腫瘤に対する造影超音波検査は保険適用外であり、当院では倫理委員会の承認を経て、患者から文書による同意を得たうえで、検査を実施している。その際の超音波検査費と造影剤費用を科研費で負担している。この研究で科研費により計57名の造影超音波検査を実施し、当院の倫理委員会に申請した上限人数にほぼ達した。 平成30年度の研究実績であるが、透析患者の腎腫瘤の評価における造影超音波検査の有用性について、第77回日本医学放射線学会総会や第46回日本磁気共鳴医学会大会、第49回腎癌研究会、第45回超音波ドプラ ・新技術研究会にて発表した。また、腎・上部尿路の画像診断-適切なマネージメントにつなげるためのminimum essence-. 画像診断 39: 61-75, 2019.に掲載された。さらに現在英文雑誌に投稿中である。
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