研究代表者は、国内の原子核反応データベースを詳細に調べ、粒子線治療における原子核反応データが統計的に十分に測定されていないことと同一の反応における異なる実験グループの測定結果が一致していないことを指摘してきた。また、一般的な原子核反応モデルに基づく原子核反応断面積を計算し、既存のモデルでは十分に実験データを再現できないことを示した。本研究は、粒子線治療における原子核反応データを測定し、データを忠実に再現する原子核反応データモデルを構築した上で、実際に治療計画装置を必要とする医療現場に提供することが目的である。計画している具体的な研究項目は、測定すべきデータの選別、原子核反応データ測定のための検出器の開発、開発した検出器による原子核反応データ測定、測定データによる原子核反応モデルの構築及び粒子線治療における精度評 価の4つである。
今年度は、昨年度に引き続き、原子核反応データ測定のための検出器の改良と開発を進めた。当初の計画では、シンチレーション部からの受光を画像データとして読みだす予定だったが、電源や読み出し回路を含めた検出器全体の縮小化と検出器自体の汎用化を目指し、複数のMPPCを用いた多チャンネル読出し方式に変更を行った。受光素子であるMPPCを用いた検出器としたことで、様々なシグナルへの対応が可能となり、より汎用的でかつ簡易的な形態での測定が可能となった。研究開始当初とは研究課題周辺の状況も変化しており、汎用性を持つ検出器として今後も開発を継続していく予定である。
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