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2015 年度 実施状況報告書

新規64Cu標識ソマトスタチン誘導体を基盤とした次世代NET診断/治療薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K19824
研究機関鈴鹿医療科学大学

研究代表者

藤澤 豊  鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (30511993)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード神経内分泌腫瘍 / ソマトスタチン誘導体 / 64Cuキレーター / ATSM誘導体 / 診断/治療用薬剤開発
研究実績の概要

近年、欧州では神経内分泌腫瘍(NET)に高発現するsomatostatin receptor 2 (SSTR2)を標的として、放射性薬剤を用いたNETの診断/治療(PRRNT)が標準的に行われている。一方、日本国内ではPRRNTを行うことは現段階では極めて難しく、世界から遅れをとっていることから、新規NET診断/治療薬の開発が期待されている。
本研究で設計した化合物は、①β+/β-線放出核種である64Cuを結合可能な構造であること、②腫瘍など低酸素部位で効率良く64Cuを放出するATSM (diachetyl-bis(N4-methilthiosemicarbazone)を64Cuのキレーターとして有すること、③分子母核にsomatostatin誘導体TATEを有する化合物であること、を特徴とする。
Fmoc固相ペプチド合成法にて、樹脂上に構築したペプチドN末端にATSM誘導体を導入し、脱保護、分子内環化および精製過程を経て、物性の異なる4種のATSMs-TATEを合成した。これら誘導体を当量の非放射性natCuと反応し、定量的にnatCu-ATSMs-TATEへと誘導することに成功した。また、これら誘導体はlogD値(pH 7.4)が-2.56~0.92、タンパク結合率は97.3~99.3%を示した。
次に、D-ペニシラミン非共存/共存マウス血清中において安定性を評価したところ、4化合物ともにD-ペニシラミン共存の有無にかかわらず反応4時間後も90%以上の高い残存率を示した。一方、グルタチオン溶液中では、natCu-ATSMs-TATEは85%以下まで残存率が低下し、natCuを経時的に放出することを明らかに出来た。以上から、新規に設計・合成したnatCu-ATSMs-TATEは、血清中では比較的安定であり、標的細胞内などの低酸素部位(高還元活性下)では容易にCuを放出する性質を持った化合物であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度に合成を予定していた陰電荷型Cuキレーターは、合成過程において目的物が十分に得られず分子設計の変更が必要となった。そのため、キレーター自体に陰電荷を与える構造ではなく、キレーター―ペプチド間のスペーサー部分に酸性アミノ酸を導入し、分子全体として陰電荷を持たせる構造へと計画を変更した。その結果、物性の異なる合計4化合物ATSMs-TATEの合成に成功し、これらの化合物が非放射性natCuと容易に錯体形成することも確認することができた。また、4種のnatCu-ATSMs-TATEの脂溶性評価、タンパク結合率の評価および安定性評価についても終了しており、平成28年度に計画していたsomatostatin receptorに対する親和性評価についても開始していることから、概ね順調に進行していると考える。

今後の研究の推進方策

平成28年度は、引き続き新規合成した化合物のsomatostatin receptor 2に対する親和性評価を行う。それに加えsomatostatin receptor 3および5などのsubtypeに対する親和性を評価し、受容体結合選択性の評価を行う。次に、化合物の64Cu標識実験を行うとともに、64Cu標識体を作成した担癌マウス(AR42J細胞移入NETモデルマウス)の尾静脈から投与する。投与後、経時的なPET撮像実験および臓器摘出法による64Cu体内分布評価を行い、64Cuの腫瘍集積性を評価する予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度の計画において、他施設における実験を行うため旅費および人件費・謝金を計上していたが、予定していたCuキレーター合成において、一部化合物で反応がうまく進行しなかった。目的とする分子合成を達成するにあたり、多種の反応条件検討が必要で高額な試薬と検討時間が必要と想定された。そこで、Cuキレーターの設計を変更して合成を行うこととした。この設計変更において、予定外の試薬購入が必要となるが、前述の検討を進める場合と比較して、安価で、かつ迅速に合成が可能であるため、有効な分子設計変更であると判断した。合成計画に変更が生じ別途試薬購入費用を捻出する必要が生じたため、旅費および人件費・謝金を物品費として割り当て使用した。その結果、物性の異なる4種の化合物合成に成功したため、平成28年度に予定していた受容体への親和性評価も一部の化合物で開始した。以上より次年度使用額が発生することとなった。

次年度使用額の使用計画

現在までの進捗状況に記載したとおり、平成27年度の研究計画はおおむね順調に進んだと考える。平成28年度分として交付申請した直接経費130万円は、今後の研究の推進方策にあげた内容を遂行するために必要であり、繰り越した次年度使用額を合わせて効率的な課題遂行を目指す。繰り越した次年度使用額は、主として物品費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 次世代NET診断/治療用薬剤の開発を目的としたATSM-SST誘導体の物性評価2016

    • 著者名/発表者名
      藤澤 豊
    • 学会等名
      日本薬学会第136年会
    • 発表場所
      ハシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-28

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公開日: 2017-01-06  

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