研究課題/領域番号 |
15K19827
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
萩森 政頼 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (40446125)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 全身性アミロイドーシス / 早期診断 / 治療モニタリング / 核医学イメージングプローブ / 蛍光イメージングプローブ |
研究実績の概要 |
本研究では、全身性アミロイドーシスの早期診断、治療効果のモニタリングの達成を目的に、アミロイド繊維への結合性の違いを基盤とした精密分子設計により、多様な全身性アミロイド線維に一様に結合する核医学イメージングプローブと、それぞれの全身性アミロイド線維に選択的に結合する蛍光イメージングプローブを開発することを計画した。 核医学イメージングプローブの開発については、チオフラビンTをベースに、あらゆる全身性アミロイド繊維に対する親和性を損なわないようにベンゾチアゾール環の7位に放射性ヨウ素の導入を計画した。標識前駆体としては、放射性ヨウ素の導入とその後の分離精製に有利であると考えられるトリブチルスズ体を設計し、出発物質である5-ブロモ-2-アミノベンゾチアゾールから3ステップで合成に成功した。標識については、初めに4級アミンのカウンターイオンの検討を行い、その後、スズ-ヨウ素交換反応によって放射化学的収率41%、放射化学的純度99.9%以上で放射性ヨウ素標識体を得ることができた。 蛍光イメージングプローブの開発については、核医学イメージングプローブの分子設計方針と異なり、ベースであるチオフラビンTの構造を大きく変えることによりアミロイド繊維への選択性が得られる可能性がある。側鎖の異なるベンゾチアゾール誘導体を合成し、2つのアミロイド繊維(AAアミロイド線維とAβ繊維)に対する結合親和性評価を評価した。チオフラビンTはいずれのアミロイド線維に対しても同程度の結合親和性を示した。一方、チオフラビンTを中性化し、アルキル鎖の長さの変更や電子供与性・電子求引性を導入することによって、各アミロイド繊維に対する結合親和性の変化が見られた。また、アミロイド繊維によって蛍光極大波長に変化が見られるなど興味深い知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年はほぼ研究計画に従い研究を遂行した。核医学イメージングプローブの開発については、標識前駆体の合成および放射性ヨウ素標識に成功し、その成果を第3回アミロイド―シス研究会学術集会にて報告した。蛍光イメージングプローブの開発については、合成したベンチアゾール誘導体の蛍光性とアミロイド繊維について有用な知見を得ることができ、その成果について第65回日本薬学会近畿支部総会・大会で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策:前年度合成に成功した放射性ヨウ素標識体を緩衝液およびマウス血漿中にてインキュベートし、経時的にHPLCにて化学形を分析することにより、インビトロでの安定性を評価する。その後、健常マウスに投与し、その体内放射能分布を経時的に評価するとともに、放射能の排泄経路、代謝過程についても検討し、合成した放射性標識体の基本的な体内動態特性を把握する。病態動物モデルについては、Amyloid Enhancing Factor(AEF)を腹腔内に投与し、急性アミロイド惹起モデルを作製する。放射性ヨウ素標識体を投与し、その体内分布を経時的に評価することにより分子イメージングプローブとしての可能性を検証する。蛍光プローブについては、前年度得られた知見を基盤に置換基のさらなる検討を行い、アミロイド繊維への選択性を有する構造を特定する。また、アミロイド繊維を形成している組織切片を合成した蛍光プローブで蛍光染色し、アミロイド線維に対する選択性を明らかにする。
次年度の研究費の使用計画:主に物品費として試薬、ガラス器具、細胞、動物を計上している。また、学会発表や情報収集のための旅費、論文執筆費などを予定している。
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