研究課題/領域番号 |
15K19835
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研究機関 | 国立研究開発法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
小原 麻希 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 博士研究員 (80736992)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重粒子線 / 突然変異 / 間接作用 |
研究実績の概要 |
重粒子線がもたらす大きい生物効果を明らかにする手段として、重粒子線誘発突然変異の欠失パターン解析を行い、重粒子線の線質の違いと欠失パターンの関係を明らかにし、低および高LET粒子線の飛跡(トラック)構造の特徴を明らかにするため、以下の3つを具体的な目的とした。 1)X線と低および高LET炭素線のhprt遺伝子座における突然変異誘発頻度を求め、炭素線の突然変異誘発におけるRBEならびにLET依存性を明らかにする。 2)X線と低および高LET炭素線のhprt遺伝子座の欠失パターン解析を行う。 3)OHラジカル除去剤を用いて放射線誘発突然変異頻度へのOHラジカルの寄与を求め、hprt遺伝子座の欠失パターンとOHラジカルの関連を調べる。 平成27年度は(1)の炭素線誘発突然変異におけるRBEならびにLET依存性を明らかにすることを目的とし、放射線誘発突然変異頻度の測定を行うため、まず突然変異体のコロニー形成の条件を検討した。次に、X線誘発突然変異頻度を測定し、炭素線誘発突然変異との比較対象とした。X線誘発突然変異頻度測定と同条件で炭素線誘発突然変異頻度を測定し、突然変異誘発へのLET依存性と炭素線誘発突然変異におけるRBEを明らかにした。平成28年度以降はX線または重粒子線誘発突然変異体の変異型解析を行い、hprt遺伝子座の欠失パターンを比較する。また、OHラジカル除去剤を用いて同様の実験を行い、フリーラジカルによる突然変異誘発への影響を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はX線と低および高LET炭素線のhprt遺伝子座における突然変異誘発頻度を求め、炭素線の突然変異誘発におけるRBEならびにLET依存性を明らかにすることを目的とし、放射線誘発突然変異頻度の測定を行った。突然変異体のコロニー形成に最適な照射線量、6-チオグアニン濃度、使用する細胞数の検討を行い、使用したチャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞では自然誘発突然変異頻度が低いことも確認した。 使用した200kV、20mAのX線では突然変異頻度は線量依存的に増加し、9Gyで最大となった。炭素線誘発突然変異では低LET放射線として14keV/µm、高LET放射線として90keV/µmの炭素線を使用し、X線と同条件で実験を行った。14keV/µm炭素線の突然変異頻度は6Gyまで線量依存的に増加し、9Gyではバックグラウンドレベルまで減少した。90keV/µm炭素線では4Gyまで計測したが細胞致死効果が高く、突然変異頻度は2Gyでピークを示した。 今後は突然変異頻度が最大となった線量で突然変異体のDNAを抽出し、変異型解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、低および高LET粒子線のトラック構造を明らかにするため、hprt遺伝子座における突然変異誘発頻度を調べ、さらにその欠失パターンを生物影響の指標として粒子線の線質の違いおよび放射線誘発フリーラジカルの寄与の関係を明らかにすることで、粒子線のトラック構造を放射線化学ならびに放射線生物学の視点から解明することを目的としている。 平成27年度はX線と炭素線のhprt遺伝子座における突然変異誘発頻度を求め、突然変異誘発のLET依存性と炭素線誘発突然変異のRBEを明らかにした。 平成28年度以降はX線と低および高LET炭素線のhprt遺伝子座の欠失パターンを解析し、重粒子線特異的な突然変異体形成の有無を明らかにする。また、OHラジカル除去剤としてDMSOを用いて放射線誘発突然変異頻度へのOHラジカルの寄与を求め、放射線誘発突然変異への間接作用の寄与率を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、第15回国際放射線研究会議の旅費と参加費が放射線医学総合研究所から支援されたため、また、予定していた日本分子生物学会に参加できなかったため、計上した旅費と学会参加費を使用せず、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の参加学会を一部変更し、European Radiation Research 2016での発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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