本研究は重粒子線による大きな生物効果を明らかにする手段として、放射線の線質の違いと突然変異誘発の関係を明らかにし、さらに低および高LET粒子線の飛跡(トラック)構造の特徴とDNA欠失パターンの関係を明らかにすることで、粒子線のトラック構造を放射線化学ならびに放射線生物学の視点から解明するため、以下の3つを具体的な目的とした。 (1)X線と低および高LET炭素線のhprt遺伝子座における突然変異誘発頻度を求め、炭素線の突然変異誘発におけるRBEならびにLET依存性を明らかにする。 (2)X線と低および高LET炭素線のhprt遺伝子座の欠失パターン解析を行う。 (3)OHラジカル除去剤を用いて放射線誘発突然変異頻度へのOHラジカルの寄与を求め、hprt遺伝子座の欠失パターンとOHラジカルの関連を調べる。 平成27年度はX線と炭素線それぞれの誘発突然変異頻度を測定し、突然変異誘発へのLET依存性と炭素線誘発突然変異におけるRBEを明らかにした。平成28年度はOHラジカル除去剤存在下でX線および炭素線誘発突然変異頻度を測定しOHラジカルの寄与率を求めた。平成29年度はX線または炭素線誘発突然変異体の変異型解析を行い、hprt遺伝子座の欠失パターンを比較した。また、OHラジカル除去剤使用時のhprt遺伝子座の欠失パターンを解析し、重粒子線誘発突然変異体へのOHラジカルによる間接作用の影響を明らかにした。
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