研究課題
小腸移植の急性・慢性を含む拒絶反応の制御に難渋しており、成績向上には免疫抑制療法の強化が必要だが感染症の対応にも苦慮しており、既存のリンパ球制御の免疫抑制は限界と考えた。そこで、我々は新たな免疫抑制療法のターゲットとしてマクロファージに着目した。2011年に取得した科研費(基盤C)による、ラット小腸移植モデルを用いた急性拒絶反応時の腸管マクロファージのサブセットの解析では、ED1/2/3マーカーによる4つのサブセットが存在し、とりわけ急性拒絶反応に強く関与するサブセットが存在することを発見した。さらに、マクロファージの起源、発生過程について調べると、マクロファージコロニー刺激因子(CSF-1)に関する知見を得、CSF-1受容体陽性マクロファージが、虚血再還流障害や急性拒絶反応において、多数組織へ移行することも知られ、腎移植のラット実験にて、同剤の投与が急性拒絶反応を軽減することが報告されていた。よって、今回、CSF-1R阻害剤を用いて、選択的にCSF-1R陽性腸管マクロファージを枯渇させ、小腸移植後急性拒絶反応の発症を抑制するという、新たな免疫抑制療法の確立を目的とする研究を開始した。結果、CSF-1受容体阻害剤は正常ラットの血中単球を減少させ、急性拒絶モデルでは拒絶所見を軽減した。さらに今年度は、拒絶を起こす環境も考慮し、臓器保存液の研究にも着手した。小腸移植では細胞内液組成保存液を用いていたが、肺移植などを参考に細胞外液組成保存液の有用性を検討した。生理食塩水・細胞内液組成保存液・外液組成保存液内で、それぞれラット小腸を保存すると、病理学的に6時間では差を認めなかったが、24時間では、生食より細胞内液組成・外液組成保存液の小腸の状態が保たれていた。今後、この2種の保存液の差異や温阻血状態での差なども検討し、そこへのマクロファージの関与にも着目したい。
すべて 2018
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)