研究課題
これまで我々は、プラズマを照射した培養液(プラズマ照射液:plasma activated medium (以下PAM))の抗腫瘍効果は、活性酸素種によるアポトーシス誘導がその主体をなすことを、胃癌及び膵癌細胞株において示してきた。さらにヒト膵癌細胞株においてはマウス異種皮下腫瘍モデルに対する、PAMの局所注射により、腫瘍増大を抑制することを示してきた。一方で、生体内には活性酸素種による抗腫瘍効果が緩衝されるシステムの存在が示唆され、腹膜播種治療へPAMを用いる場合、より強力なPAMの生成が必要になる可能性が考えられた。そこで我々は、胃癌細胞株(SC-2-NU, AGS)を用いて、PAMを生成する際の各種条件(プラズマの照射距離及び時間、プラズマ照射を受ける液体の体積)の変化が抗腫瘍効果に与える影響、また腫瘍の進展、転移等に関連する癌細胞の遊走能及び接着能にPAMが与える影響について検討した。より長時間、より近接した距離でのプラズマ照射を行うことにより、抗腫瘍効果の高いPAMの作成が可能であり、その他の条件が同一であれば、照射を受ける液体の体積が少ないほうが、より抗腫瘍効果の高いPAMを生成することが可能であることをMTS assayを行い証明した。遊走能については、wound healing assayを行いPAMの存在下において有意に細胞の遊走が低下することが示された。また浮遊状態とした胃癌細胞株(SC-2-NU, AGS, GCIY-EGFP)を短時間(5分間)PAMに暴露することにより、著明に接着能が低下することがadhesion assayにて示された。これらin vitroの実験結果をもとに作成した強力なPAMを用い、蛍光標識胃癌細胞株を使用して、マウス腹膜播種モデルにおける、PAMの腹腔内投与の効果を検証した。治療開始15日目の時点で、播種の形成率はcontrol群100%、PAM投与群20%と播種形成の抑制効果を認め、さらに治療期間中において、PAMの腹腔内投与による有害事象を思わせる所見は認めなかった。
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Annals of Surgical Oncology
巻: 24 ページ: 1188-1194
10.1245/s10434-016-5759-1