研究実績の概要 |
補体系の活性を網羅的に解析する新しい手法を確立するために、ヒトおよびマウス/ラットの血液検体を用いて、以下の実験を実施した。(1) 補体系因子を測定し得る適切な抗体を選別、フローサイトメトリー用のビーズを作成し、極少量の検体で複数の補体系因子を同時測定可能な定量測定法を確立する。(2) ザイモザンなどの補体活性化物質を用いて試験管内で検体内の補体を活性化させ、補体カスケードの最終産物であるMAC(膜侵襲複合体)やC9 neoantigenなどの産生速度をフローサイトメトリーで計測することにより、補体の定量のみならず活性も同時に確認出来る測定系を確立する。既存の補体活性測定法であるCH50(もしくはACH50)との相関を解析し、その特性を確認する。(1) に関しては、C3a, C5a, C5b-9、および活性抑制因子としてS protein, SP-40,40 を測定する方針とし、ビーズを作成した。結合部位が異なる2種類のモノクローナル抗体を準備する事が困難なため、ポリクローナル抗体を使用せざるを得ないのが現状であり、測定感度を高める工夫が必要である。(2) に関しては、ヘパリン血漿を用いた実験では測定値のバラツキがあまりにも大きく、検体の解凍操作中に既に補体系の活性化が進行している事が明らかとなった。一方で多量のEDTAにより補体活性を抑制した検体では本来の活性化を反映しているとは言い難く、検体の採取および保存方法に関して今後更なる検討が必要である。 測定系の作成には筋道がついた状況であり、次年度は臨床検体を用いて肝移植周術期における補体系の動態を明らかにすると共に、補体欠損動物モデルも用いながら肝移植時の諸障害における補体系の役割を解明していく予定である。
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