研究実績の概要 |
肝移植後における微小循環障害の病態解明のため、最も鋭敏に反応する免疫機構である補体に着目し、その活性動態を包括的に測定すべく、C3a, C4a, C5a, C5b-9, Factor H, S proteinを同時計測可能な測定系の開発を行った。研究当初はBD社のCytometric Bead Array (CBA) 用の抗体beadsの作成を目標とし、1年目は数種類の抗体を用いてbeadsを作成したが、満足に反応するbeadを得る事が出来なかった。この間に、MILLIPLEX社よりMultiplex Assayによる、ヒト補体系測定キットが開発・商用化された。そこで2年目はこのキットをベースとし、数種類の項目を追加する事とし、Multiplex assay用の抗体beadsを作成した。human C5b-9, rat C5b-9, mouse C5b-9, porcine C5b-9の抗体beadsの作成を試みたが、beadsに十分な抗体がbindされた事は確認できたものの、実際に血清を用いて測定したところ、測定結果は残念ながら信頼に足るものではなかった。一方、他に肝移植後微小循環障害の指標となりうる測定項目であるADAMTS13に対しても同様にMultiplex用のbeadを作成したところ、こちらは問題なく機能した。抗体beadsの作製法には特に問題はなく、適切な抗体を選択すれば測定系を構築可能である事が判明した。今後も適切な抗体を検索しつつ、ヒトのみならずラット・マウス・ブタの包括的な補体測定系の構築を目指す予定である。
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