研究実績の概要 |
当施設に開設されたクリニカル・アナトミー教育・研究センターにて未固定遺体を用いたリンパネットワークに関する研究を4遺体に対して施行した。まず、リンパ管造影前の未固定遺体の単純CT画像を得た。次いで両側の腋窩に皮膚切開を置いて、左側は腋窩リンパ節郭清なし、右側は腋窩リンパ節郭清ありとした。乳房および上腕のリンパ管造影を行い左右差を比較するため、乳房皮内ならびに指間部皮内にジアグノグリーンとイオパミドール370(370mg/ml)を1:1で混合し注射した。これまでの報告(Breast Cancer. 23:519-524, 2016 Misako Misako Nakagawa et al.)のように近赤外線カメラにより腋窩に向かうリンパ管の描出が可能であったが、未固定遺体においては皮内注射のみでは注射部位に留まっておりリンパ管の走行を観察する事はできなかった。解凍の問題を改善させるため、左右の鎖骨下動静脈に14Frセイラムサンプチューブを留置、温生食を注入するように前処置を施すこととした。さらに皮内への局所注射がリンパ管の小孔を通過してリンパ管内に流入することが期待できないことから、インジゴカルミン+希釈した過酸化水素水を指先端に注射する方法を行なった。手背で拡張したリンパ管が同定出来たため、これらリンパ管へのカニュレーションを施行した。実体顕微鏡下に33G針(Hamilton, Metal Hub Needles)を刺入し緩徐にジアグノグリーンとイオパミドール370(370mg/ml)1:1の混合液をリンパ管へ注入した。注入中前腕部分を近赤外線カメラでリンパ管を観察したが手背から中枢側のリンパ管を描出する事はできなかった。左右差共にカニュレーションまではできたが腋窩へのリンパネットワークを描出する事はできなかった、この結果はCT撮影においても同様の結果であった。未固定遺体による腋窩郭清によるリンパ流の変化を観察する事は今回用いた実験方法では観察することができないという結果であった。
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