肥満症に対する外科治療(Metabolic surgery)の糖尿病改善効果について、我々はDuodenal-jejunal bypass(DJB)において、Common limbの胆汁酸吸収の上昇がL細胞を増殖させ、GLP-1分泌を促進し、肥満、糖尿病、NASHを改善することを報告してきた(J Gastroenterol Hepatol. 2014)。大腸はこれまで水分および電解質の吸収器官と考えられてきたが、大腸にGLP-1分泌を促進する胆汁酸受容体(TGR5)が発現しており(Gastroenterology 2013)、大腸microbiomeが肥満を規定することが報告され(Science 2013)、その重要性が注目されている。そして、Duodeno-jejunal bypass (DJB)に大腸バイパス術を併施することで減量・糖尿病改善・NASH改善効果を減弱するとの着想に至った。本研究では大腸の役割を解明し、肥満外科手術における大腸の意義を明らかとすることである。 OLETF ratをDJB群(D群n=4)、開腹のみのSham群(S群n=4)、GLP-1アナログ製剤Liraglutide投与群(L群n=4)に分け、術後8週でOGTTを施行、全血・小腸・肝臓・糞便を採取し、各群の小腸・大腸におけるGLP-1分泌細胞(L cell)を免疫染色にてcount。3群間で肝NASH grading/staging、microbiotaを比較した。 体重増加抑制効果はD>L>Sであった。D・L群におけるOGTT30、60、120分の血糖はS群と比較し有意に低値であり、insulin抵抗性の改善を認めた(D、L群はn.s.)。D群の胆汁酸は他2群に比し高値を示しており、GLP-1(15、30分)も高値を示していた。D群の回腸L cell数は他2群と比較し有意に増加。また、D群のAST、FFA、ヒアルロン酸は他2群と比較し有意に低値を示し、NASH grading/stagingにおいても軽度であった。さらにD群microbiotaではGammaproteobacteriaの増加、Bacteroidiaの減少を認めた。大腸バイパスについては 手術を施行したが、そのほとんどが下痢、脱水で死亡する結果となりマウスモデルにおいて有用性を実証で規定なかった。
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