腫瘍内血流の不均一性やそれに起因する低酸素領域は癌の悪性度や浸潤・転移能と関連するとされている。純粋な腫瘍内血流を評価できる造影超音波検査は癌の悪性度を簡便に評価できる可能性があると推察される。 乳癌における腫瘍内血流と薬物療法の効果との関連を検討するため、原発性乳癌に対して術前薬物療法を施行する患者に対して乳腺造影超音波検査を施行した。 薬物療法奏功例に関しては腫瘍縮小と同時に腫瘍内血流の均一化を認めた。非奏功においては腫瘍内血流の変化は乏しかった。 薬物療法の効果は臨床病理学的因子との関連がみられるため、造影超音波検査所見と病理学的因子との関連を検討した。乳癌の悪性度と薬物療法の効果予測として用いられるエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、HER2蛋白の発現、細胞増殖の指標であるKi67 labeling indexを免疫組織染色にて判定し、造影超音波検査所見との関連を解析した。また、腫瘍量を反映し、病期分類に用いられるリンパ節転移の有無との関連も解析した。エストロゲンレセプターの発現が陰性の症例においては腫瘍内血流の不均一さを多く認めたが、プロゲステロンレセプター、HER2蛋白発現、Ki67値との関連は認めなかった。また、リンパ節転移を伴う症例は、内部血流が不均一な腫瘤が多かった。 内部血流が不均一な所見は、エストロゲンレセプター陰性やリンパ節転移などの悪性度が高い乳癌と関連する可能性が示され、エストロゲンレセプターの発現は治療標的となる可能性があるため、治療効果が超音波検査所見と関連する可能性が示唆された。
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