研究課題/領域番号 |
15K19865
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
及川 将弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90612416)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腫瘍内不均一性 / 乳癌 / 術前化学療法 / circulating tumor DNA / ゲノム不安定性 / クローン交替 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、分子遺伝学的手法を用いて、乳癌術前化学療法における腫瘍内不均一性およびクローン交替の実態を明らかにし、治療効果に与える影響を解析するものである。具体的な研究項目は以下の3項目である。1) 乳癌術前化学療法中のクローン交替と治療効果・予後との関連、2) 乳癌術前化学療法前後のctDNA中のHER2 amplificationの変化と治療効果・予後との関連、3) クローン交替を指標とした乳癌術前化学療法の新たな臨床試験。 本年度は我々の持つアレイCGHの技術により腫瘍内不均一性およびクローン交替を検出できるかを調べるため、病理形態学的に特徴的な形質をもつ乳腺扁平上皮癌(SCC)と通常型乳癌(NST)の混合癌においてcytogeneticな解析を試みた。5例の扁平上皮癌を対象に、通常型乳癌の混在を示す3症例においては各々の部位よりtumor DNAを抽出し、SurePrint G3 8x60k microarray(Agilent社)を用いたアレイCGH解析を行い、各症例および同一症例内のSCC部とNST部の細胞遺伝学的プロファイルを比較した。コピー数変化領域の数は2か所から160か所と症例によって大きな変化を認めたが、SCCで共通の変化領域は認められなかった。同一症例内でSCC部とNST部の比較を行った3例では、2例で細胞遺伝学的プロファイルはほぼ一致した。1例ではSCC部で多数のコピー数変化を認め、NST部で見られるコピー数変化はすべて一致していた。これにより、稀な疾患である乳腺扁平上皮癌の細胞遺伝学的プロファイルが明らかになったとともに、腫瘍間不均一性、腫瘍内不均一性ともに大きいことが明らかになった。腫瘍内不均一性の検討により、NST部がSCC部の発生母地であることが示唆された。この成果は全国学会・国際学会で発表し、学術雑誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は4月に研究代表者の異動があったため、研究環境を整えるため時間がかかり、進捗状況において若干の遅れが発生した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、異動先の研究施設でも予定していた研究内容を実行可能であることが明らかになったため、サンプルが集まり次第、随時実験と解析を進めていく予定である。 1) 乳癌術前化学療法中のクローン交替と治療効果・予後との関連については、大学病院および関連施設での倫理委員会に審査を諮る予定である。承認され次第、サンプル収集を行う。 2) 乳癌術前化学療法前後のctDNA中のHER2 amplificationの変化と治療効果・予後との関連についは、既に大学病院および関連施設での倫理委員会で承認されている。現在、サンプルも着実に集まってきており、今年度中に実験と解析を行う予定である。 3) クローン交替を指標とした乳癌術前化学療法の新たな臨床試験については、前述の2項目で有用な知見を得られた際に、試験を計画する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は4月に研究代表者の異動があったため、研究環境を整えるため時間がかかり、進捗状況において若干の遅れが発生した。そのため、予定されていた研究資材を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
1)乳癌術前化学療法中のクローン交替と治療効果・予後との関連:化学療法前、化学療法2サイクル後の腫瘍よりtumor DNAを抽出し、アレイCGHを行う。Cytogenomic profileの比較によりクローン交替を定量化し、治療効果・予後との関連を解析する。 2)乳癌術前化学療法前後のctDNA中のHER2 amplificationの変化と治療効果・予後との関連:HER2陽性乳癌の治療前、治療後の血漿よりctDNAを抽出し、アレイCGHを行う。HER2遺伝子増幅消失の有無と治療効果・予後との関連を解析する
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