研究実績の概要 |
膵胆道癌患者からの腫瘍促進マクロファージ単離ができず、実験計画の再検討を余儀なくされた。当初検討していたCpG-siRNAの治療応用を鑑みたとき、腫瘍細胞および腫瘍微小環境間質細胞のTLR9発現とその相互作用が重要である観点から、研究計画を再度検討した。TLR9の刺激はInsulin-like growth factor、Nuclear factor-kappa Bといった転写因子が介在し、免疫担当細胞において様々なサイトカインを誘導することが知られているが、癌細胞においての誘導は未だよくわかっていない。そこで、腫瘍増殖や腫瘍微小環境形成にかかわることが予想されるEpidermal Growth factor、Vascular endothelial Growth Factor、Interleukin-6、Interleukin-8、Interleukin-10、Chemokine ligand 2、Chemokine ligand 5、Chemokine ligand 22、Insulin-like growth factor-1でTLR-9を介したCpGによる癌細胞の増殖および周囲環境への影響を観察した。TLR9の発現を確認した癌細胞株に対してTLR9 agonistであるCpG-ODN(ClassB)を投与した。CpG-ODN添加を24時間固定とした濃度変化(2.5, 5, 10, 25μg/ml)および10μg/mlの濃度固定とした時間変化(2,3,8,16,24時間)で癌細胞における各遺伝子発現の変化をRT-PCRで観察した。結果はいずれも有意な遺伝子発現変化が認められず、TLR-9の発現を認めても、癌細胞においてCpG-ODNの作用が必ずしも働くとは言えない可能性が判明した。一方、TLR9発現組織を検討した結果、手術切除組織標本において大腸癌細胞およびその浸潤先進部周囲の間質細胞にTLR9の発現を強く認め、TLR9を介した腫瘍細胞及び間質細胞の関連が示唆された。予後不良な転移病変においても同様な結果が得られた。以上から、今後は実行可能および意義のある実験系として、CpG刺激下大腸癌細胞での遺伝子発現変化および周囲微小環境との相互作用を観察する予定としている。
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