大腸癌手術検体192例におけるCripto-1の発現を検討したところ、68例(35%)で陽性を示した。Cripto-1陽性例は腫瘍径が有意に大きく(P < 0.001)、深達度pT3以深症例(P < 0.001)、リンパ節転移症例(P = 0.044)、肝転移症例(P < 0.001)、TNM分類Stage III-IV症例(P = 0.002)で有意に多く認められた。またCripto-1陽性例は無再発生存期間、全生存期間が有意に短く(無再発生存期間、全生存期間ともにP < 0.001)、独立した予後不良因子であった。続いて、HT-29、DLD-1においてCripto-1の発現抑制を行ったところ、細胞増殖能や細胞遊走能が有意に低下し、Cripto-1の発現低下に伴いAktやMAPK(mitogen-activated protein kinase:分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ)のリン酸化が抑制されていた。さらに、Cripto-1安定発現抑制大腸癌細胞株を作成し、免疫不全マウスへの皮下移植、ならびにマウス盲腸への同所移植を行ったところ、Cripto-1の発現抑制により有意に腫瘍形成能が低下し、リンパ節転移が減少した。以上よりCripto-1がAktやMAPKを介した細胞内シグナル伝達経路により大腸癌細胞の増殖、腫瘍進展を制御している事が示された。Cripto-1は大腸癌の新規予後不良因子であり、バイオマーカーや治療標的として臨床応用できる可能性があると考えられた。
|