本研究は、膵内分泌腫瘍(NET)においてDAXX遺伝子などが、腫瘍肝転移時にあたえる影響を動物モデルで検討し、また各種薬剤への治療効果にどのように関与しているかを明らかにすることを主旨として計画された。DAXX遺伝子の機能解析に先立ち、NETの予後への関連性が示唆されているプロゲステロン受容体に注目し、この機能解析を進めていた。 本年度は、NETにおいて臨床学的特徴の異なる、機能性腫瘍および非機能性腫瘍におけるプロゲステロン受容体およびインスリン産生能に焦点を絞り、関連性を明らかにすべく、研究を行った。プロゲステロン受容体とホルモン産生の関連を確認していくと、機能性(ホルモン産生)腫瘍の代表格であるインスリノーマでは、非機能性腫瘍とくらべ明らかにプロゲステロン受容体の発現率が高いことが確認された。さらに非機能性腫瘍(臨床学的にはホルモンを産生していない腫瘍)のなかでも、免疫組織学的検討によってのみホルモン発現している腫瘍が存在し、インスリノーマほどではないものの、全くホルモン発現していない非機能性腫瘍と比べると、有意差をもってプロゲステロン受容体の発現率が高いことを示した。 NETをホルモン分泌の種類によって分類することで、プロゲステロン受容体の発現と、腫瘍の臨床学的特徴を明らかにすることができた。 今後、プロゲステロン受容体および各種ペプチドホルモン産生との関連およびpNETにおける内分泌的特徴獲得におけるプロゲステロン受容体の役割などについて検討していく。
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