研究実績の概要 |
肝障害の治療としてsiRNAを用いてアポトーシスを抑制した報告はみられるが, 肝構成細胞の全てが標的であり, LSECを選択的に抑制した報告はない. 独自に開発したLSECに選択的に集積するDrug Delivery System(DDS)を用いてLSECのアポトーシスのみを選択的に抑制し, 肝炎モデルの肝障害に及ぼす影響を検討する. 方法:ミトコンドリアを介するアポトーシスを抑制するために, BaxのsiRNAを使用した.(in vitro)M1細胞(マウス肝類洞内皮細胞)にLipofectamineRNAiMAXでsiRNAを導入し, 導入24時間後にstaurosporine(STS)を投与してアポトーシスを誘導する. siRNA非導入群をコントロール群, siRNA導入群をsiRNA群とし, STS投与2時間後に細胞を採取する. (in vivo)Bax siRNAをマウス(C57BL/6J, 雌性, 8~9週)に尾静脈投与する. LSEC選択的DDSを用いsiRNAを投与した群をLSEC群, 肝臓選択的DDSを用いた群をHC群, 生理食塩水のみを投与した群を生食群, LSEC選択的DDSにcontrol siRNAを封入して投与した群をMEND群とする. siRNA投与24時間後に肝炎誘導のため抗Fas抗体を腹腔内投与し, 血清(抗Fas抗体投与前, 投与2時間後, 6時間後, 24時間後), 肝臓(投与24時間後)を採取する. 結果:(in vitro)Bax mRNA発現相対比についてはsiRNA群で発現抑制を認めた. またsiRNA群で, Baxおよびcleaved-caspase-3のタンパク発現低下を認めた. in vitro マウス肝類洞内皮細胞において, Bax siRNA投与によりアポトーシスが抑制された. 今後in vivoについて実験を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
今後、Bax siRNAをマウス(C57BL/6J, 雌性, 8~9週)に尾静脈投与しLSEC群, HC群,生食群, MEND群を設定し、類洞内皮細胞を選択的に抑制した場合の肝障害の程度を測定する。類洞内皮細胞については電子顕微鏡を用いて形態評価を行う予定である。in vitroにおいて, M1細胞と同様の実験をAML12(マウス肝細胞)で行う. またin vitroにおいても, DDSの細胞選択性があるのかを検討する. さらに, 肝類洞内皮細胞のアポトーシスの後に, 肝細胞に及ぼす影響を解析するために, サイトカインやヒートショックプロテイン等を測定していく.MENDを用いた治療の可能性として, 劇症肝炎による肝障害だけではなく, 慢性肝炎や虚血再灌流による肝障害への応用が可能と考えられ, 慢性肝炎モデルなどの長期間観察モデルでは発症後の治療薬としての投与効果が期待されることから、研究を進めていくこととする。
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