研究実績の概要 |
肝障害の治療としてsiRNAを用いてアポトーシスを抑制した報告はみられるが, 肝構成細胞の全てが標的であり, 肝類洞内皮細胞(LSEC)を選択的に抑制した報告はない. 独自に開発したLSECに選択的に集積するDrug Delivery System(DDS)を用いてLSECのアポトーシスのみを選択的に抑制し, 肝炎モデルの肝障害に及ぼす影響を検討した. 方法:ミトコンドリアを介するアポトーシスを抑制するために, BaxのsiRNAを使用した.(in vitro)M1細胞(マウスLSEC)にsiRNAを導入し, 導入24時間後にstaurosporine(STS)を投与してアポトーシスを誘導。siRNA非導入群をコントロール群とし, STS投与2時間後に細胞を採取した結果、Bax mRNA発現相対比はsiRNA群で発現抑制を認め、またsiRNA群で, Baxおよびcleaved-caspase-3のタンパク発現低下を認めた. つまりM1細胞において, Bax siRNA投与によりアポトーシスが抑制された.(in vivo)Bax siRNAをマウスに尾静脈投与しLSEC選択的DDSを用いsiRNAを投与した群をLSEC群とし, 肝臓選択的DDSを用いた群をHC群, 生理食塩水のみを投与した群を生食群, control siRNAを封入して投与した群をMEND群とし検討を施行した結果、 LSEC群のみでアポトーシスが有意に抑制され、結果、肝障害抑制を示し、電子顕微鏡像・鍍銀染色において類洞構造が保たれているのを確認した。以上からLSECを特異的に保護することで肝障害を抑制できる可能性がはじめて示唆された。今後、LSECを特異的に保護することで各種肝障害を抑制できることの検証を進める。
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