研究課題
本研究では、Caホメオスタシスに関与する因子の一種であるCa2+-ATPaseの活性化の阻害が肝細胞癌の増殖抑制効果を誘導し、生体において抗癌効果を発揮するかを検討してきた。今年度は、肝癌移植モデルを用いたin vivoでの抗癌効果を解析した。その結果、Ca2+-ATPase阻害剤の一種であるthapsigarginの複数回投与が、肝癌腫瘍の生育を抑制した。また、この腫瘍生育抑制効果の大きさは肝腫瘍の形成に用いた細胞種によって異なった。なお、本研究で検討したthapsigarginの濃度範囲では、マウス個体に対する顕著な毒性はみとめられなかった。過去の研究において、当該化合物が静止期の正常細胞に対して顕著な毒性を示さないことを明らかにしていたが、マウス個体を用いたこのin vivo解析でその結果が裏付けられた。従って、thapsigarginは、生体内においても肝細胞癌に対して抗癌効果を発揮する能力を有すると示唆される。一方、thapsigarginによって誘導された細胞死のメカニズムを検討するためにwestern blot解析を実施したところ、caspase-3の活性化などのようなアポトーシスに関連する現象が検出された。従って、Ca2+-ATPase阻害剤による肝細胞癌細胞の細胞死は、細胞内でのCaホメオスタシスの破綻によるストレス誘導を介したアポトーシスによるものであると考えられる。本研究の今後の展開としては、thapsigarginに続くCa2+-ATPase阻害剤に着目し、肝細胞癌細胞に対して特異性の高い毒性効果を有する化合物を探索する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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