研究実績の概要 |
脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)は、間葉系幹細胞 (MSC)と同様にがん細胞との応答に より腫瘍関連線維芽細胞(Cancer Associated Fibroblastoma: CAF) の起源細胞であると想定されているが、胃癌細胞とADSCとの細胞間相互作用に関しては不明な点が多い。 本年度は、まず、ヒト大網の脂肪組織よりADSCを分離継代し、胃癌細胞の増殖能に与える影響及びin vivoにおける造腫瘍能と線維化に与える影響に関して検討を行った。 まず、ヒト大網の脂肪組織より間質細胞群の分離を行い、培養後に細胞表面マーカー(CD22,44,90,105+/14,31,34,45-)をFACSにて解析し、ADSCのpurityを確認した。分離培養したADSCが胃癌細胞の増殖能に与える影響をMTT assayにて検討した所、非接触共培養にて増殖促進効果を認めた。さらにヌードマウス皮下に胃癌細胞とADSCを5×106個共接種し、腫瘍径を経時的に評価した結果、胃癌細胞単独接種に比較し、造腫瘍能の亢進が確認された。また、ADSCを共接種した皮下腫瘍組織では、腫瘍内の間質線維化と共に、E-cadherinの発現が減弱し、αSMAの発現が亢進している事が免疫組織学的に確認された。しかしながら、ADSC単独接種では皮下腫瘍の形成は確認できなかった。 以上の結果から、ADSCは胃癌細胞の増殖能を促進し、胃癌間質の線維化を上皮間葉転換(EMT)を誘導することにより亢進する事が示唆された。
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