| 研究実績の概要 |
脂肪由来幹細胞(ADSC)はこれまでに腫瘍関連線維芽細胞(Cancer Associated Fibroblastoma: CAF)として機能し、癌間質の線維化を誘導する事が報告されている。胃癌においても、腹膜播種のomental cake に代表されるように脂肪組織の線維化が顕著であるが、胃癌細胞とADSCとの細胞間相互作用に関しては十分に検討されていない事から本研究を立案した。
H27,28年度において、ヒト大網からのADSCの分離、培養法を確立し、癌間質内のCAFとしての機能解析を行った。つまり、胃癌細胞との細胞間相互作用によって、癌細胞のEMTを誘導し、xenograftにおいて、癌間質内の線維化を誘導する事を確認した。また、胃癌細胞の共培養下において、sphere形成能を亢進させ、stemness関連蛋白の発現が増強した事から、ADSCは胃癌細胞の幹細胞性獲得に寄与している可能性が考えられた。
このため、H28年度は、マウス皮下腫瘍モデルを用い、化学療法抵抗性に関して検討を行った。同モデルに胃癌化学療法のkey drugである5-FUを投与した結果、ADSCと胃癌細胞との共投与群は、胃癌細胞単独投与群に比較し、5-FUの腫瘍縮小効果が抑制され、ADSCが胃癌の化学療法抵抗性獲得に関与する事が示唆された。今後 xenograftの関連蛋白の発現解析等の追加検討を実施予定であるが、ADSCは、胃癌微小環境において、CAFとして機能し、癌幹細胞性の維持に寄与している可能性が高いと考える。
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