潰瘍病変は粘膜の脱落、粘膜下層の強い繊維化を伴っており、コントロールとして用いる腸管と形態的に大きく異なっているため、比較が難しいという問題点があった。そこでクローン病の肉眼的正常部を用いて癌患者非癌部回腸と比較することによって形態的な比較が可能となった。クローン病患者腸管Cryptにはフォスファチジルコリン(PC(36:4))が多いことから多価不飽和脂肪酸合成に関わるLPCAT3に注目し、LPCAT3が腸管内分泌細胞に多く発現していることを発見した。 5-HTを分泌する腸管内分泌細胞株RIN-14BにLPCAT3を過剰発現させ、分泌刺激に対する分泌能を測定したところ、過剰発現細胞は有意に多くの5-HTを分泌した。免疫透過電顕法で観察したところ腸管内分泌細胞の分泌顆粒上にLPCAT3が集積しており、LPCAT3は腸管内分泌細胞では顆粒の形成に関わる可能性があると考えられた。
|