研究課題/領域番号 |
15K19878
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹羽 由紀子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50746401)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロRNA / エクソソーム / 食道癌L1 / テーラーメード治療 / NACRT |
研究実績の概要 |
当研究室が所有する食道癌治療前血液サンプルから術前化学療法(シスプラチン+フッ化ピリミジン製剤)施行患者のうち、治療効果が完全奏効もしくは著効した化学療法奏効群4検体および増悪を認めた化学療法不応群4検体の計8検体を、高性能DNAチップ基板3D-Gene(R);を用いマイクロRNAの網羅的解析を行った。 変動遺伝子として、化学療法不応群で高発現していたマイクロRNAの候補を28種類認めた。miR-4638-5p、miR-1236-5p、miR-193b-5p、miR-4451、miR-6895-5p、miR-7641、miR-6820-5p、miR-873-3p、miR-4486、miR-3150b-5p、miR-4746-3p、miR-4435、miR-423-5p、miR-4443、miR-6798-5p、miR-23a-5pなどであった。 上記のうち、PCRを行うことができるための要件としてプライマーが市販されていること、また発現強度が比較的強いなどの条件を満たし、かつ他癌において薬剤耐性に関与している報告のあるmiR-193b-5p、miR-873-3p、miR-23a-5pの3つを本研究における治療効果予測バイオマーカーの候補とした。 当科で食道癌術前化学療法施行し血清検体を142検体のうち、化学療法の内容にシスプラチンを含むレジメン(CDDP+5FUもしくはCDDP+S-1)を施行した111検体に対し、上記のマイクロRNA3種類に対するPCRを行い、発現強度と組織学的化学療法奏効度の相関を検討する。その検討において、最も強い相関を示すマイクロRNAが、食道癌のCDDDPレジメンに対する治療抵抗性を示すマーカーとして同定される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高性能DNAチップ基板3D-Gene(R);を用いマイクロRNAの網羅的解析が終了し、ターゲットとなるマイクロRNAをmiR-193b-5p、miR-873-3p、miR-23a-5pの3つに絞り込むことができた。食道癌術前化学療法の内容にシスプラチンを含むレジメン(CDDP+5FUもしくはCDDP+S-1)を施行した血清からRNA抽出した。 現在これらの定量PCRを施行中である。マイクロRNAの発現強度と組織学的化学療法奏効度の相関関係の検討おいて、最も強い相関を示すマイクロRNAが、食道癌のCDDDPレジメンに対する治療抵抗性を示すマーカーとして同定される見込みである。平成27年度の研究実施計画および目標は達成できていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究により、食道癌に対するシスプラチンおよび5FUへの治療耐性に関与すると同定されたmiRNAにつき、Target Scan(on line)を利用し、発現に関与する遺伝子やシグナルの検索を行う。次に、食道癌細胞株を用い、pre-miRNAをトランスフェクションすることにより、強制発現もしくは強制抑制を行い、MAPKとAKT pathwayを含めたシグナル伝達の変化、EMTマーカーとして代表的なE-cadherinとVimentinの発現変化につき、RNAとタンパクレベルにて確認する。さらにまた、アポトーシスの誘導をWcaspase3/7活性測定により検証し、増殖能、遊走能、浸潤能などの機能解析を進める。上記により、同定miRNAが食道癌の発癌、進展、浸潤や転移の過程において、どのレベルで関与しているのかを探索する。
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