当研究室が所有する食道癌治療前血液サンプルから術前化学療法(シスプラチン+フッ化ピリミジン製剤)施行患者のうち、治療効果が完全奏効もしくは著効した化学療法奏効群4検体および増悪を認めた化学療法不応群4検体の計8検体を、高性能DNAチップ基板3D-Gene(R)を用いマイクロRNAの網羅的解析を行い、変動遺伝子として、化学療法不応群で高発現していた28種類のマイクロRNAが判明した。このうち、miR-193b-5p、miR-873-3p、およびmiR-23a-5pの3つを本研究における治療効果予測バイオマーカーの候補とした。 食道癌術前化学療法施行し血清検体を142検体のうち、シスプラチン+フッ化ピリミジン製剤の二剤を術前化学療法として施行した111検体に対し、上記のマイクロRNA3種類に対するPCRを行った。マイクロRNAの発現と組織学的化学療法奏効度の相関を検討した。食道癌取扱規約の化学療法治療効果の病理組織学判定基準を用い、著効群(Grade2およびgrade3)と不応群(Grade0、Grade1a、およびGrade1b)の二群における各マイクロRNAの発現をt検定を用いて解析した。miR-23a-5pでは発現において有意差を認められなかった(P = 0.507)が、miR-193b-5pおよびmiR-873-3pは、不応群において有意に高発現していた(それぞれP = 0.044、P = 0.025)。 以上より治療前血液中にmiR-193b-5pもしくはmiR-873-3pが高発現している患者では本邦の食道癌治療の1st lineであるシスプラチン+5-FUレジメンに対し治療抵抗性を示す可能性がある。 本研究の結果は、食道癌の治療strategyを個々に検討するテーラーメード治療を実践する上で有用な情報となり得る。
|