研究課題
進行胃癌は治癒切除術後も微小転移の残存により再発することがある。なかでも腹膜播種再発は画像による早期診断困難かつ難治性であり、診断および治療の標的となりうる新たな分子の同定が急務である。そこで我々は、新規腹膜播種形成のdriver遺伝子を同定するため、次世代シーケンサーによるTranscriptome解析を用いて、胃癌再発形式別の網羅的群間遺伝子発現比較を行った。根治的胃切除術が施行されたStage III胃癌症例で、長期無再発群、腹膜播種再発群、肝転移再発群、リンパ節再発群の4群を対象に次世代シーケンサー(HiSeq、Illmina社)を用いた57751分子のTranscriptome解析を行い、候補分子腹膜播種に特異的に発現亢進する分子としてSynaptotagmin VIII (SYT8)を抽出した。胃切除術を施行した340例から得た組織中のSYT8発現量を調べたところ、原発巣組織中SYT8発現量は同時性あるいは異時性腹膜播種症例で高値であった。高SYT8群は有意に予後不良であり、 高SYT8は腹膜播種再発の独立危険因子であった。高SYT8群では、Stage II/III症例に対する術後補助化学療法による予後改善効果が乏しくなっていた。胃癌細胞株を対象に、siRNA法を用いたノックダウンによる増殖能、遊走能、浸潤能、5-FU感受性への影響を評価したところ、SYT8の阻害により胃癌細胞の浸潤能、遊走能および5-FU耐性が低下した。マウス腹膜播種モデルへのsiRNA腹腔内投与は、腹膜播種結節形成を抑制し、生存期間を有意に延長した。Transcriptome解析により同定したSYT8は、胃癌腹膜播種の診断マーカーおよび治療標的として有望な分子であるものと考えられた。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Annals of Surgery
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1097/SLA.0000000000002096