研究課題/領域番号 |
15K19881
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 泰洋 三重大学, 医学系研究科, 助教 (20572655)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 浸潤性膵管癌 / 化学放射線治療 / 局所進行膵癌 / 細胞外マトリックス |
研究実績の概要 |
膵癌は他の癌腫と比較して、豊富な細胞外基質を伴う過剰な間質増生を病理組織学的特徴とし、間質と癌細胞の相互作用がその進展に関わっている。特に細胞外マトリックスの一つであるTenascin-C (TN-C)は、活性化膵星細胞により産生され、癌細胞周囲に発現し、癌の浸潤・転移の促進への関与が示唆されている。しかし、化学放射線治療効果がこれらの癌微小環境に与える影響や細胞外基質発現の治療効果マーカーとしての有用性は検証されていない。そこで、局所進行膵癌に対するCRTの治療成績と切除標本を用いた組織学的効果判定の関係、またCRTの効果判定における癌間質内TN-C発現の有用性について検討した。当科で化学放射線治療後に切除された157例をEvans分類に基づいて、50%以上の腫瘍壊死効果を認めたhigh responderと50%未満のlow responderに分類し、MSTを比較するとhigh 59例が33.9ヶ月、low 98例では23.9ヶ月とhighで有意に予後良好であった。局所進行切除不能膵癌 (UR-LA)110例中、切除された46例で癌間質内Tenascin-C (TN-C)発現で比較すると、MSTはTN-C陰性22例で29.3ヶ月と、陽性23例の17.1ヶ月より有意に予後良好であったが、組織学的効果ではhigh (12例)で 31.0ヶ月、low (34例)で 21.3ヶ月と、highでMSTがやや延長するものの有意差はなかった (P=0.113)。これらより、術前治療後の癌間質内TN-C発現は残存腫瘍のviabilityや生物学的悪性度を反映しており、有用な予後予測因子となりうるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学放射線治療が、膵癌関連細胞外マトリックスであるTenascinC(TNC)の発現、TNCを合成する活性化膵星細胞に与える影響を明らかにする臨床研究については概ね順調に進んでいる。学会発表を行ったとともに、現在、論文発表の準備を進めている。化学放射線治療が免疫担当細胞、免疫抑制細胞に与える影響の解明は現在、進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
CRTが膵癌組織内に動員される免疫抑制細胞(MDSCs, Tregs)と免疫担当細胞に与える影響の解明について実施を進める。具体的には膵癌患者の膵癌組織内、血液中に動員される免疫抑制細胞である骨髄由来免疫抑制細胞(MDSCs: CD11b+CD15+cells)とTregの動態に与える影響を明らかにする。
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