本研究では、PathogenicTh17細胞を誘導する自然免疫担当細胞を同定し、その誘導メカニズムを明らかにすることにより、炎症性腸疾患の治療開発に貢献することを目的とした。 正常腸管に存在する4つのサブセットの自然免疫細胞間ではPathogenicTh17細胞を特異的に誘導する細胞は認めなかった。次に、クローン病患者の非炎症部・炎症部腸管を用いて、正常腸管と同様の手順で実験を施行した。クローン病腸管と正常腸管の4つのサブセットの細胞間でPathogenicTh17細胞の誘導能を比較したが、いずれの細胞も同程度の誘導能であった。当初の研究実施計画では、同定した自然免疫担当細胞の機能解析を今年度は進めていく予定にしていたが、研究計画の変更が必要になった。そのため、MDR1陽性T細胞の機能解析を施行する方針とした。 はじめに腸管からT細胞を採取する方法の検討をおこなった。自然免疫担当細胞を採取する方法では、CD4陽性T細胞を採取できないため、酵素処理の方法の変更等を検討した。最終的には酵素を用いない方法で腸管からCD4陽性T細胞を採取可能となった。正常腸管からMDR1陽性CD4陽性T細胞とMDR1陰性CD4陽性T細胞を採取し、mRNAを抽出しcDNAを作成した。qRT-PCRによりこれらの細胞の炎症性サイトカインや抗炎症性サイトカインなどのmRNA発現を解析したが、2群間でサイトカイン発現に差は認めなかった。
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