研究実績の概要 |
「食道癌に対する化学療法感受性および副作用予測におけるABCトランスポーターの意義」の研究計画として①食道扁平上皮癌切除サンプル・食道癌細胞株における各ABC transporter発現解析と臨床病理学的因子および予後との相関の検討、②腫瘍における化学療法前後での各ABC transporter発現変化と化学療法副作用・効果との相関、③関連施設のデータベースを用いて日本人の食道扁平上皮癌患者に多くみられるABC transporterのSNPsの同定、④食道扁平上皮癌細胞株パネルにおける各ABC transporter発現解析と化学療法耐性との相関、発現ブロックによる化学療法感受性への介入の検討(in vitro解析)、という内容を設定した。現在までの進行状況としては、①では代表的なABC transporterのうち特にABCC2について切除サンプルを用いた定量的RT-PCR法および免疫組織染色により術前無治療症例と比較して術前化学療法症例で、また術前化学療法症例のうち奏効例より非奏効例で腫瘍組織のABCC2発現が有意に高いことを見い出した。また、切除サンプルでABCC2高発現症例は低発現症例より有意に予後不良であった。②に関してはABCC2発現と化学療法副作用との関係を検討したが明らかな相関は認めなかった。③については関連施設のデータベース利用のIRB申請が滞っている状態のため現在まで研究進捗の遅延をみとめている。④について食道扁平上皮癌細胞株パネル(TE1,5,6,9,10,11,14,15)を用い、ABCC2発現解析と化学療法耐性(とくにCDDP)との相関を認めた。現在はABCC2以外のトランプポーターについても同様な実験をすすめている段階である。
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