研究課題/領域番号 |
15K19892
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構東広島医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
下村 学 独立行政法人国立病院機構東広島医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (60457249)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 遺伝子変異 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
Transforming growth factor(TGF)-βシグナルの構成分子の一つであるTGF-β receptor II(TGFBR2)は、マイクロサテライト不安定(MSI-High)大腸癌の約70-90%で変異を認め、その変異によりTGF-βの癌抑制性シグナルが不活化され腺腫から癌への進展が促進される。また、今までにWnt-β-catenin経路の異常活性化に加えてTgfbr2を不活化した大腸癌モデルマウスが報告され、Tgfbr2変異による癌化の促進を示すフェノタイプの変化が確認されている。しかしながら、Tgfbr2の不活化により変化している新たな遺伝子を探索しようとしたマウスモデル研究の報告はない。このような研究背景から大腸上皮特異的にAdenomatous polyposis coli (Apc)とTgfbr2の2つの遺伝子がノックアウト(KO)され、大腸に腫瘍を形成するマウスモデルを作製し、新たなTGF-βシグナルターゲット癌関連遺伝子を探索することを目的として研究を行っている。我々は大腸上皮特異的にApcがKOされる大腸癌マウスモデル‘CDX2P-G19Cre;Apcflox/flox mouse’ (以下、ApcKO mouse)を報告してきた。それを応用しApcとTgfbr2が大腸上皮特異的にKOされる‘CDX2P-G19Cre;Apcflox/flox;Tgfbr2flox/flox mouse’ (以下、ApcKO+Tgfbr2KO mouse)を作製した。このマウスでは近位大腸に高分化腺癌成分を含む多数の腫瘍が形成された。その腫瘍からレーザーマイクロダイセクション法で抽出した癌組織のtotal RNAを用い、ApcKO mouse腫瘍 (n=3)とApcKO+Tgfbr2KO mouse腫瘍(n=3)の遺伝子発現を網羅的に解析したところ、Tgfbr2 KOに伴い9.25倍に発現上昇していた遺伝子Xを同定した(p=0.045)。ヒト大腸癌検体、およびin vitroの実験系において、遺伝子Xの機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的どおりの遺伝子改変マウスの作成に成功し、Tgfbr2遺伝子変異の移入によって発現は亢進する遺伝子を同定、さらにin vitroの実験系において機能解析を予定通り行っているため順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト大腸癌検体において、TGFBR2変異statusと免疫組織化学的染色によるProtein Xの発現の関係の解析を続けていく。またin vitroの実験系において、遺伝子Xの大腸癌における発現の意義を解析するために、大腸癌細胞株でのノックダウン、強制発現における細胞増殖能などの解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調に進行しているが、使用試薬費の誤差として216289円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の遂行に必要な抗体、試薬の購入費に使用する計画である。
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