研究実績の概要 |
本研究の全体構想は、「肝臓切除後に低下する肝臓内Natural Killer(NK)細胞の活性を維持し、腫瘍増大を制御すること」である。肝臓内NK細胞は強力な抗腫瘍活性を持つが、肝切除後にその活性は低下し腫瘍再発の一因となっている。網羅解析の結果、肝切除後に白血球遊走物質ケモカインCXCL9が有意に減弱していた。この新知見をもとに、本研究の目的は、「ケモカインCXCL9が、抗腫瘍活性の強いTRAIL (TNF-related apoptosis inducing ligand)発現NK (Natural killer)細胞を肝臓内に維持させるメカニズムを解析する」ことである。 本研究計画では、肝切除前後、担癌状態におけるCXCL9の肝臓内局在と分泌細胞の同定を行う。肝臓に発現している主なケモカインとして、RANTES, MIP-1α, IP-10などが報告されている。予備実験の結果から肝切除後に肝組織中のCXCL9 mRNA発現が有意に低下していた。しかし、CXCL9の肝臓内発現分布や分泌細胞については依然不明である。免疫染色及びフローサイトメトリーの結果では、肝臓内構成細胞のうちマクロファージが有意にCXCL9を発現していることが明らかとなった。 また、肝切除後に肝臓内ケモカインCXCL9発現を維持させ、TRAIL陽性NK細胞を含む自然免疫担当細胞の動態及び機能変化を解析した。B6マウス肝臓由来TRAIL陽性NK細胞をMACS(磁気ビーズ法)を用いて抽出し、トランスウェルを介した細胞遊走実験を行い、CXCL9依存性にTRAIL陽性NK細胞の遊走能が上昇した。
|