研究課題
膵癌に特徴的な過剰な間質増生や活性型膵星細胞の腫瘍促進的な働きは広く知られる。オートファジーが膵発癌を抑制する一方で、確立された膵癌の進展を促進することは知られるが、間質のオートファジーの役割は明らかでない。また前癌病変周囲の間質や膵星細胞の発癌過程における役割も不詳である。本研究では膵発癌過程での周囲間質のオートファジー機能を解明し、新たな膵癌早期診断や前癌病変から癌への進展の予防法を開発する。本年度は、ヒト胎児膵由来の膵星細胞(HPaSteC細胞)を用いて、正常膵星細胞のオートファジー誘導が、膵星細胞に与える影響を検討した。一般的なオートファジー誘導である飢餓条件やラパマイシン添加だけでなく、膵癌培養上清添加によっても、正常膵星細胞のオートファジーが亢進することを、western blotによるLC3-Ⅱの上昇とp62の低下から示した。さらに、このオートファジー亢進にはリン酸化AMPKの上昇とリン酸化mTORの低下を伴っていることも発見し、AMPK-mTOR経路の関与が示唆された。さらに、これらのオートファジー誘導によって、α平滑筋アクチン,Ⅰ型コラーゲン,フィブロネクチンは上昇していた。細胞質内の脂肪滴をbodipy染色によって評価したところ、オートファジー誘導によって細胞内脂肪滴数は減少し、膵星細胞の活性化をさらに示唆する結果であった。これらの結果から、膵星細胞のオートファジーは、膵星細胞の活性化に必要であることが示唆され、国内外の学会,英文雑誌で報告した。
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Gastroenterology
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10.1053/j.gastro.2017.01.010