研究課題
腹膜播種モデルマウスを用いて、腹膜播種性転移に有意に働き、胃癌患者の予後を大きく規定する遺伝子を治療標的と考えその探索を行った。腹膜播種モデルマウスに用いる腹膜播種性転移細胞株4種類およびそれぞれの親株3種類のgene arrayによる遺伝子発現比較と胃癌臨床サンプル200例の遺伝子発現情報との統合解析を行い、腹膜播種陽性症例に高発現し、予後を規定する遺伝子群の同定を行った。それぞれの腹膜播種性転移細胞株と親株との比較のなかで、HSC-58に比較して58As9において高発現する遺伝子で構成した遺伝子群が、胃癌臨床検体において腹膜播種陽性症例に高発現しており、予後不良因子であることが分かった。その中でも、DDR2はコラーゲンのレセプターであり、DDR2の発現をknockdownさせると、胃癌腹膜播種モデルマウスにて有意に腹膜播種の数が減少した。またコラーゲンを安定化させる分子であるPLOD2も腹膜播種陽性症例で高発現していた。コラーゲンは、いわゆるscirrhous型胃癌の間質に広範に発現しており、発現が高い症例では、腹膜播種再発症例が多いことが分かった。胃癌間質のコラーゲンは、癌関連線維芽細胞より発現していること、また、腹膜播種陽性症例の腹水中には多くのコラーゲンが含まれておりこれらは腹膜中皮細胞から発現していることが知られている。これらの癌・癌微小環境の関係性を抑制することは今後の癌治療の新しい標的となる可能性がある。まとめ:腹膜播種性転移細胞の遺伝子発現は、胃癌臨床検体における遺伝子発現ならびに臨床情報を表現しており、胃癌腹膜播種のメカニズムを解く非常に有用なツールであると思われる。その中でもDDR2、PLOD2は、腹膜播種症例で高発現しており、DDR2-PLOD2 collagen axisの抑制は胃癌腹膜播種の有望な治療ターゲットであることが示唆された。
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Sci Rep
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