• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

温熱刺激によるアクアポリン制御を介した胃癌低浸透圧細胞破壊増強機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K19903
研究機関京都府立医科大学

研究代表者

小菅 敏幸  京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00457946)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード胃癌 / 肝癌 / アクアポリン5 / 温熱刺激 / 低浸透圧刺激 / 細胞周期
研究実績の概要

我々はすでに肝癌細胞株において温熱刺激による低浸透圧細胞破壊の増強効果を確認していたため、まずは肝癌細胞株を用いた実験を行った。ウエスタンブロット法により肝癌細胞株(HLE、Alexander、Hep-G2)におけるアクアポリン1, 3, 5蛋白発現を比較検討したところ、Alexander細胞でアクアポリン1, 5発現が高いことを確認した。一方、温熱刺激(42度)による殺細胞増強効果もAlexander細胞において最も高く、アクアポリン発現レベルに応じて温熱刺激による殺細胞増強効果に違いがあることを確認した。アクアポリン高発現株であるAlexander細胞を用い、温熱刺激によるアクアポリン1, 5蛋白の発現変化を解析したところ、アクアポリン1に変化を認めなかったが、細胞膜および細胞質のアクアポリン5発現が減弱することを確認した。高分解能型自動細胞解析装置を用いた細胞容積変化の解析では、温熱刺激によりAlexander細胞の細胞容積が減少したが、アクアポリン5 siRNAを用いてAlexander細胞のアクアポリン5発現を制御した際にも同様の細胞容積減少が確認された。Alexander細胞の細胞周期解析では温熱刺激によるG0/G1停止を認めたが、アクアポリン5のノックダウン実験でも同様にG0/G1停止が生じることを確認した。以上の結果から、アクアポリン5発現癌細胞株における、“温熱刺激によるアクアポリン5の下方制御を介した細胞増殖抑制”という新たな分子生物学的・生理解剖学的メカニズムを明らかにした。
一方で、低浸透圧刺激による癌細胞破壊療法については、胃癌、大腸癌、肝癌細胞株において、クロライドチャネル、カリウムチャネル、水チャネル阻害薬併用による殺細胞増強効果を明らかにしており、これらの研究成果はすでに学会発表するとともに英文雑誌に投稿している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肝癌細胞株を用いた実験ではあるものの、当初の研究計画のとおり、肝癌細胞株におけるアクアポリン発現レベルの解析、温熱刺激によるアクアポリン蛋白の発現、局在、容積変化・殺細胞効果の反応性の解析(温熱刺激によるアクアポリン活性制御のメカニズム解析)の検討は終了している。研究計画時には、温熱刺激によりアクアポリン活性が上昇し、低浸透圧刺激時の細胞内への水の流入が増加することで癌細胞破壊が増強するとの実験仮説を立てていたが、実際には温熱刺激によりアクアポリン5発現は下方制御され、細胞容積は縮小することが明らかになった。しかしながら、温熱刺激による癌細胞株の細胞増殖抑制にはアクアポリン5蛋白の下方制御が深く関与しているという新たなメカニズムを明らかにした。すでに、次年度に計画していたアクアポリン発現制御系を用いた研究も進行中であり、研究計画は順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

我々はこれまでに、ヒト食道癌細胞株におけるアクアポリン5蛋白の発現、アクアポリン5蛋白の発現制御系を用いた細胞周期およびアポトーシス制御機構の解明のほか、ヒト食道癌組織におけるアクアポリン5蛋白発現とその臨床病理学的意義を明らかにしている(J Gastroenterol. 2014)。今後は、肝癌あるいは胃癌をはじめ種々の癌におけるアクアポリン5発現の臨床病理学的意義、温熱刺激によるアクアポリン5制御の詳細なメカニズム、温熱刺激によるアクアポリン5発現の下方制御を介した抗腫瘍効果について、癌細胞株、癌切除検体、マウス癌転移モデルを用いて明らかにしていく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (7件)

  • [学会発表] イオン輸送体制御による新たな食道癌治療戦略2015

    • 著者名/発表者名
      塩﨑敦、市川大輔、藤原斉、小菅敏幸、小西博貴、森村玲、村山康利、小松周平、栗生宜明、生駒久視、中西正芳、岡本和真、阪倉長平、大辻英吾
    • 学会等名
      日本消化器外科学会大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-11
  • [学会発表] 胃癌細胞株に対する蒸留水細胞破壊効果の検証(in vivo and in vitro study)2015

    • 著者名/発表者名
      竹本健一、塩﨑敦、市川大輔、小菅敏幸、小西博貴、小松周平、栗生宜明、生駒久視、中西正芳、藤原斉、岡本和真、丸中良典、大辻英吾
    • 学会等名
      日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
  • [学会発表] 低浸透圧刺激による胃癌細胞へのパクリタキセル取り込み増強効果2015

    • 著者名/発表者名
      小菅敏幸、塩﨑敦、市川大輔、飯高大介、竹本健一、小松周平、小西博貴、岡本和真、藤原斉、有田智洋、中西正芳、村山康利、大辻英吾
    • 学会等名
      日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
  • [学会発表] 肝細胞癌におけるregulatory volume decrease の阻害による低浸透圧殺細胞効果の増強2015

    • 著者名/発表者名
      工藤道弘、塩﨑敦、小菅敏幸、市川大輔、小松周平、小西博貴、有田智洋、森村玲、生駒久視、藤原斉、岡本和真、丸中良典、大辻英吾
    • 学会等名
      日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
  • [学会発表] 細胞生理学を応用した新たな食道癌治療戦略2015

    • 著者名/発表者名
      塩﨑敦、藤原斉、市川大輔、小菅敏幸、小西博貴、小松周平、岡本和真、岸本光夫、丸中良典、大辻英吾
    • 学会等名
      日本食道学会学術集会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2015-07-02 – 2015-07-03
  • [学会発表] マウス胃癌腹膜播種モデルにおける低浸透圧療法の安全性と治療効果の検討2015

    • 著者名/発表者名
      有吉要輔、塩﨑敦、市川大輔、小菅敏幸、小西博貴、森村玲、村山康利、小松周平、栗生宜明、生駒久視、中西正芳、藤原斉、岡本和真、阪倉長平、大辻英吾
    • 学会等名
      日本外科学会定期学術集会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-04-16 – 2015-04-18
  • [学会発表] 腹腔内遊離細胞治療を目的とした大腸癌細胞株における低浸透圧細胞破壊効果とクロライドイオン輸送制御による殺細胞効果増強の検討2015

    • 著者名/発表者名
      竹本健一、塩﨑敦、市川大輔、小松周平、小菅敏幸、小西博貴、森村玲、村山康利、栗生宜明、生駒久視、中西正芳、藤原斉、岡本和真、阪倉長平、丸中良典、大辻英吾
    • 学会等名
      日本外科学会定期学術集会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-04-16 – 2015-04-18

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi