研究実績の概要 |
食道扁平上皮癌細胞株(TE8)から、ALDH高発現細胞をsorting後、sphere形成能を有する細胞のみを分離し、癌幹細胞を培養した。抽出された癌幹細胞における抗癌剤耐性能、再分化能も確認した。作製した癌幹細胞と親株での遺伝子発現をmicroarrayを用いた網羅的解析により比較検討したところ、TRPV2, CLCN2, ATP1B2等のイオン輸送体が癌幹細胞において高発現していることを同定した。また、TRPV2, CLCN2, ATP1B2のmRNAが高発現していることを細胞株でのReal-time PCRでも再確認した。その中から、TRPV2チャネルに着目し、その選択的阻害剤であるトラニラストが、癌幹細胞特異的に、増殖抑制効果を示すことを明らかにした。また、親株をトラニラストで処理したところ、ALDH発現が抑制されることを示した。同時に、他の食道扁平上皮癌細胞株(KYSE790)からも癌幹細胞を抽出培養し、同様に癌幹細胞においてTRPV2が高発現する現象を確認した。一方で、ヒト食道癌組織においてTRPV2の免疫染色を行い、様々な染色パターンを解析した。また、TE8細胞においてsiRNAを導入し、TRPV2をノックダウンしたところ、細胞増殖抑制効果を認めた。さらに、トラニラストのTRPV2選択的抑制効果を検証するため、Ca2+ chemical-specific dyeであるFluo-8を用い、細胞内Ca2+濃度の変化を解析した。Carbacholによって誘導される細胞内Ca2+濃度の上昇は、トラニラストやTRPV2 siRNAにより抑制されることが示され、トラニラストの選択的効果が明らかとなった。 これらの研究成果は英文論文にまとめて発表した(J Gastroenterol. 2017)。
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