昨年度から継続して、飢餓やストレス下などの各種の条件におけるオートファジー活性化の確認を行い、活性化の条件を確認したがやはり安定した結果を得るには至らず、PCRアレイによる正確な評価は困難と判断し、解析は一端保留とした。 ATG7の欠失株であるKYSE890にATG7発現constractを導入し、オートファジーの回復が確認されたstable cloneを用いて、ストレスなどの刺激や化学療法による変化の確認を行った。この結果、オートファジーが回復した細胞株では各刺激に伴い、オートファゴソーム内に選択的に取り込まれるp62の減少が観察された。これによりKeap1が活性化され、Nrf2との結合が促進されることにより、Nrf2の分解促進・不安定化がもたらされることが確認された。 Nrf2は各種の刺激に対する防御因子として働き、一般に細胞保護因子であると考えられており、癌細胞においてもNrf2の減少により、各種の刺激や抗がん剤に対する感受性が増加し、癌細胞自身の弱体化から結果として予後の改善につながるものと予測された。このため、免疫染色で得られたATG7発現高値群での予後改善は、オートファージ―の活性化に伴うNrf2発現の低下による癌細胞の各種刺激への弱体化が一因であると予測された。 引き続きNrf2発現の食道癌細胞株に与える影響に関してsi-Nrf2を用いた細胞実験を施行し、Nrf2発現の抑制により増殖能の抑制が確認された。また、抗がん剤への感受性に関して、Nrf2の発現抑制は5FUの効果に影響を与えないものの、シスプラチン処理に対する感受性の増加を示す可能性が示唆され、現在この結果に関して検証中である。 また別の実験として、肝細胞癌におけるAQP5の分解にオートファジーが関連する可能性が高まり、選択的分解と抗腫瘍効果をもたらす事を確認し報告を行った。
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