研究実績の概要 |
膵癌は全世界の死因第4位であり、今後さらに増加していくものと考えられている。しかし、外科的切除できても5年生存率は20から30%であり、予後不良の癌である。手術のみでは根治が望めないため、現在では術前の化学療法、放射線療法を行うことで治療成績を向上させようと試みがある。特にすでにリンパ節転移を伴う膵癌に対しては術前加療の恩恵が高いと考えられる。しかしながら、膵癌術前のリンパ節転移の正診率は各種画像診断を用いてもまだ低い。術前にリンパ節転移を正確に診断できることは、治療方針決定のためには重要な要因である。 一方、癌を含む様々な疾患においてmicro RNA(miRNA, miR)が、その病態形成や調節に大きく関与する事が報告されており、細胞内のみならず細胞外にも安定な形で存在する事が知られてきた。申請者は、膵癌患者血漿中のmiR-18a, -221が癌の存在や病態評価のbiomarkerとして有用である事を示唆してきた。 本研究では、膵癌のリンパ節転移に関わる候補miRNAを同定し、さらに膵癌リンパ節転移の診断を可能にするbiomarkerの確立を目指してきた。平成27年度は、膵癌患者の手術時採取した術前血漿を用いて、miRNA microarrayによる解析を行う事で、リンパ節転移のない患者と比べリンパ節転移のある患者血漿内で増加するmiRNAを同定し、膵癌リンパ節転移の新たなbiomarker候補を抽出することが可能であった。今後は同定した候補miRNAマーカーに対して、RT-PCR法を用いて実際の患者血漿での比較を行い、従来の腫瘍マーカーや画像診断との対比からバイオマーカーとしての有用性を検討する予定である。
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