膵癌におけるESRP1の役割と新たな治療方針の開発を検討した。当院では膵癌手術を行っており膵癌の切除標本を集めた。集積した膵癌症例の臨床病理学的因子を検討した。さらに周術期の感染症および合併症の症例も検討した。検討段階であるが、ESRP1の低発現群の方が膵癌の文化度が低分化な傾向があり、進行癌が多く、予後も悪かった。周術期の感染症とは関連を認めなかった。膵癌に対する亜全胃温存膵頭十二指腸切除術の術後感染症に関連するのは術前に胆道ドレナージを要し、プラスチックステントを留置したかどうかで、内瘻群において有意に感染症の発症が多いことが分かった。また、感染症群において術後3日目のドレーンアミラーゼの値が有意に高いことが分かった。さらに、術後在院日数が有意に延長することが分かった。膵癌に対する化学療法に関してはESRP1低発現群の方が抵抗性を示したと考えられた。また、膵癌において新たな抗癌剤が保険適応となりゲムシタビンのみでなく、アブラキサン、オキサリプラチン、イリノテカンとの関連を検討するため、症例の集積を行った。また、膵癌以外の癌腫、肝癌および胆道癌でも検討を行った。ESRP1だけでなく、ヒアルロン酸、4型コラーゲンが肝細胞癌の生存率および再発率に関与していることが分かった。また肝臓手術の際には肝血流を遮断するいわゆるプリングルを法を行うが、解除後に肝十二指腸間膜の用手的なマッサージが、門脈血流を改善し、術後のCRPの上昇が抑えられることが分かった。また、胆道癌では手術を施行した際の胆管断端における、p53およびKi-67が予後に関与することが分かった。胆道再建を伴う肝切除においては、胆管空腸吻合の縫合不全の有無が術後のSSIに有意に関連し、術後在院日数を有意に延長させることが分かった。
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