脳死心臓移植時に摘出されたrecipient肺動脈弁を0.5%のデオキシコール酸及び硫酸ドデシルにて脱細胞化し、脱細胞化心臓弁の作成を昨年に引き続き施行した。この脱細胞化心臓弁は電子顕微鏡での検査及び免疫組織染色におけるcollagen I、collagen III、elastin及びLamininに関する評価において、まず、細胞成分が完全に除去されていることが確認でき、また細胞外マトリックスの構造が脱細胞化前の状態が維持されていることがわかった。このことは、本手法で作成した脱細胞化心臓弁の細胞成分以外の構造が維持されている可能性を示唆するものと考えられる。また、免疫組織学的検討では、弁組織表層はCD31陽性細胞で覆われ、吻合部の移植組織内にCD31陽性細胞が宿主組織側から侵入している様子が見られた。また、同部位では、vimentin陽性且つcollagen I陽性細胞を認めたが、さらに、これらの細胞では、免疫組織検査においてTGF-β、VEGF及びSDF-1の産生を認めた。また同様に免疫組織検査および電子顕微鏡による評価では、これらの細胞内においてmicrofilamentの構造を認め、組織学的にmyofibroblastの存在が示唆され、新たな細胞外マトリックスの産生が示唆された。このことは、本手法で作成した脱細胞化心臓弁は移植後に宿主の細胞により再細胞化、自己組織化をする可能性をしめしていると考えられる。これらの結果に関しては、本年度ヨーロッパにおいて開催された学会内での研究会で、同様の方法で脱細胞組織を作成しているドイツ・ハノーファー医科大学の脱細胞手技および非臨床detaに関し、意見交換を行なった。
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