研究実績の概要 |
まずはヒトiPS細胞由来心筋細胞とヒトiPS細胞由来神経前駆細胞を配合し、スフェロイドを作製することを試み、神経前駆細胞を配合することにより、心筋細胞のみと比べ、凝集の改善したスフェロイドを作製することに成功した。ただこの時点では心筋細胞と神経前駆細胞をどうのような比率で配合すればいいのかが不明であり、それぞれの配合比率を90:10, 80:20, 70:30, 60:40とそれぞれ比率を変え、各比率におけるスフェロイドの違いを検討することとした。スフェロイド作製後、2-4日以内に全てのスフェロイドが拍動を開始した。心筋細胞の比率が60%の群ではスフェロイド作製後2週間以内に全てのスフェロイドが拍動を停止したが、他の群では全てのスフェロイドが1ヶ月以上拍動を続けた。 さらに動画解析ソフトを用いて、収縮率の差異を検討したところ、心筋細胞が70%の群が最も収縮率が大きいことがわかった。しかし、将来的に目的とする機能的拍動スフェロイドには、心筋細胞や神経前駆細胞の他に線維芽細胞や内皮細胞などを配合することが必要となり得るため、心筋細胞と神経前駆細胞の比率が必ずしも70%と30%と断定できるわけではないが、以上の結果からは神経前駆細胞を配合することにより心筋スフェロイドの拍動収縮動態が変化しうることは示すことができた。なお、1ヶ月ほど収縮したスフェロイドを蛍光免疫染色した結果、βtubulin陽性の神経線維様の組織をスフェロイド内部に認めることができ、神経前駆細胞が神経線維へ分化しうる可能性も示せた。今後は、線維芽細胞や内皮細胞などを配合することにより、より凝集能やスフェロイド内部の細胞生存率を向上させたスフェロイドの作製が望まれ、さらにそのスフェロイドにより作製されたグラフトの心不全モデル動物への移植が期待される。
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