研究課題
臓器移植における最大の課題である拒絶反応は急性拒絶反応に関しては免疫抑制剤やステロイド等の投与方法や開発により、移植成績は良好な傾向となった。一方で、慢性拒絶反応に関しては依然制御できない状態であり、移植臓器不全の大きな要因となっている。慢性拒絶反応は微小血管の内膜肥厚や微小血管炎が一因とされており、長期の免疫反応の中で血管内膜トロンボモジュリン(以下、TM)が減少し、それが慢性拒絶反応の基盤となるのではと考えた。今回、TMの心臓移植片に対する冠動脈内膜肥厚抑制効果と抗炎症効果を検討し、同時に免疫制御細胞の誘導の有無と慢性拒絶反応制御の解析を行う。平成27年度は無治療群とTM投与群の作成と同時に、TMのtitration(TM投与量128U、12.8U、1.28U/匹)を行い、各群での中間生存期間(以下、MST)を測定した。MSTは無治療群7日間、TM128U投与群50日間、TM12.8U投与群24日間、TM1.28U投与群17日間であった。現在、免疫組織染色によって冠動脈内膜に分布するTMの変化について調査中である。平成28年度はTM128U投与群の生着延長を示す移植心臓と無治療群の免疫組織染色を術後1週、2週、4週目で評価した。TM投与群の移植2週後と4週後の組織評価において、心筋組織構造は比較的保たれFoxp+制御性T細胞が多く誘導されていた。また、冠血管構造は保持され、冠動脈周囲のTM発現も保たれていた。この結果を総括し、現在Transplantation ProceedingsとJournal of Cardiothoracic Suregeryへ投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
TM投与群の生着延長効果や移植心内に浸潤する制御性T細胞の確認、血清TMの推移などを調査し、現在Transplantation ProceedingsとJournal of Cardiothoracic Surgeryへ投稿中である。
トロンボモジュリンが実際にプロテインCを活性化する瞬間はin vitroやin vivoで証明されていない。トロンボモジュリンの細胞外ドメインを分析し、各要素の機能を調査することでトロンボモジュリンの機能解析を更に進めることを検討している。
・マウス繁殖が予想より順調であり、追加購入するマウスが少なかったため。・手術用機材、薬剤(麻酔薬、縫合糸など)を節約し、当該年度の追加購入を控えることが出来たため。・平成29年度までの結果をまとめ、2本の論文を作成し提出している段階であり、論文掲載料を算定したため。また、追加実験を要する事態も想定している。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Journal of Cardiothoracic Surgery
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.1186/s13019-018-0731-8
Transplantation Proceedings
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
https://doi.org/10.1016/j.transproceed.2018.04.015
https://doi.org/10.1016/j.transproceed.2018.02.204