研究課題/領域番号 |
15K19931
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 征二郎 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40646931)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 肺扁平上皮癌 / グルタミン代謝 |
研究実績の概要 |
非小細胞肺癌において、肺扁平上皮癌のがん薬物治療の成績は停滞している。治療成績の向上には分子標的治療薬の開発が必須である。本研究では、肺扁平上皮癌の34%に認められるKeap1/Nrf2シグナル活性化の結果、肺扁平上皮癌はグルタミン代謝に依存しているとの仮説を立て、研究を行っている。 扁平上皮癌細胞株6株(Sq-1、LK-2、LC-1/sq、EBC-1、RERF-LCA1、QG56)を使用し、グルタミン依存性実験(細胞株をグルタミンを除去した培地で培養)を行うと、QG56細胞株意外ではコントロールと比較して細胞低下が認められ、各細胞株によって依存性の程度が異なることが分かった。グルタミンをグルタミン酸に変換する酵素である腎性グルタミナーゼ(Gls1)がほぼ全例の細胞株で発現をみたのに対し、肝性グルタミナーゼ(Gls2)の発現は2細胞株のみで発現していたことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究者自身が当初予定していたよりも実臨床に割く時間が増えてしまったことと、新潟大学地域医療教育センター魚沼基幹病院開院により、科全体の人員不足が生じ、実験協力者である大学院生もほぼ臨床に従事することになった事などが原因となった。 今年度は入局者が増え、やや人員が増えたことで研究に時間を取ることが出来ると思われ、遅れを取り戻す予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)Nrf2活性化により、グルタミン代謝を亢進させることが明らかとなっており、siRNAでNrf2を knock downすることにより、肺扁平上皮癌細胞におけるグルタミン依存性が解除されるか、Gls1発現が変化するかを解析する。 2)各細胞株より、フォスファターゼ阻害剤を加えた溶液でタンパクを抽出し、mTORC1の下流シグナルであるSK6およびS6のリン酸化タンパク抗体を用いて、各細胞株におけるmTORC1の活性化の状態を調べて、グルタミン依存性との関連があるか評価する。 3)Gls1阻害剤であるBis-2-(5-phenylacetamido-1,3,4-thiadiazol-2-yl)ethyl sulfide (BPTES)を各種濃度で細胞に加えることより、その増殖抑制効果を評価する。またグルタミン依存性の肺扁平上皮癌を6株の中から選択しスキッドマウスの皮下に移植し、マウスに上記の阻害剤で最も効果的な阻害剤を加えることのよる抗腫瘍効果を評価する。 4)臨床検体を用いた実験として、分化の違う検体を5-10例程度それぞれ用いて、keap1、Nrf2のmRNA発現量とGls1(KGAとGAC)、Gls2のmRNA発現量、および,抗keap1抗体、抗Nrf2抗体、抗Gls1抗体、抗Gls2抗体を用いて免疫染色にてタンパク発現を評価し、扁平上皮癌の分化度によりグルタミン代謝依存性の高いentityが層別化できるか評価する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本人ならびに研究協力者の臨床業務時間が増え、実験の遅れが生じており、研究に必要とする、備品・試薬購入が遅れたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度に実験研究時間を確保し備品および試薬を購入する。
|