研究課題/領域番号 |
15K19931
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 征二郎 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40646931)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グルタミン代謝 / 肺扁平上皮癌 / グルタミナーゼ1 / グルタミナーゼ2 / mTORC1 |
研究実績の概要 |
グルタミン(Glu)抑制培地では、肺扁平上皮癌6細胞株のうち、5つの細胞株(Sq-1、LK-2、LC-1/sq、EBC-1、RERF-LC-AI)で細胞増殖が抑えられた。一方、QG56細胞株ではほとんど細胞増殖抑制はなかった。各細胞株におけるグルタミナーゼ1(GLS1)とグルタミナーゼ2(GLS2)のmRNA発現を調べてみると、相対的GLS1 mRNAレベルはGLS2の発現レベルと比較して全細胞株で高発現していた。そのため、GLS1が肺扁平上皮癌細胞株のGlu分解に重要な役割を果たしていると推測した。 ここで、GLS1選択的阻害酵素であるBPTESを用いてGLS1における細胞増殖の影響を調べてみた。Glu依存性細胞株であるRERF-LC-AIとEBC-1では強く抑制されたのに対し、Glu非依存性のQG56細胞株ではBPTESによる増殖抑制効果はほとんどなかった。これはBPTESと異なったGLS1阻害酵素であるcompound 968を用いても、Glu依存性細胞株はQG56細胞株と比較して細胞増殖を有意に抑制した。 しかし、GLS1のmRNA発現レベルとGlu抑制培地下細胞増殖抑制には相関はなく、Glu依存細胞株EBC-1と非依存細胞株QG56の相対的GLS1 mRNA発現レベルがほぼ同等であった。この現象を検討するため、各細胞株のGLS1とGLS2のmRNA発現比を調べてみたところ、GLS1/GLS2比がGlu依存と強い正の相関をしていた。 Glu分解抑制で、mTORC1活性(下流基質であるS6 ribosomal proteinのリン酸化で評価)が抑制されるかどうかを検討した。Glu依存細胞株RERF-LC-AIではGlu抑制培地下でS6リン酸化レベルが減少するのに対し、Glu非依存細胞株QG56は同条件下で、S6リン酸化レベルの低下は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度よりも結果はでていると思われるが、当初予定していたエフォートよりも実臨床に割く時間が多かったと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
① Nrf2活性化により、グルタミン(Glu)代謝を亢進させることが明らかとなっており、siRNAでNrf2を knock downすることで、肺扁平上皮癌細胞におけるGlu依存性が解除されるか、Gls1発現が変化するか解析する。 ② Glu依存性の肺扁平上皮癌を6株の中から選択しスキッドマウスの皮下に移植し、マウスにGls1阻害剤を加えることのよる抗腫瘍効果を評価する。 ③ 臨床検体(凍結切片、FFPE)を使用したGls1、Gls2のmRNA発現評価と抗Gls1および抗Gls2抗体を用い扁平上皮癌の臨床病理学的情報(分化度等)からGlu代謝依存性の高いentityを層別化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本人ならびに研究協力者が予定エフォートよりも実臨床業務時間が多かったため、実験の遅延が生じている。そのため、予定必要物品・試薬の購入も遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に実験研究時間を確保し、備品および試薬を購入していく。
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